ゼロ

るろうに剣心 最終章 The Finalのゼロのレビュー・感想・評価

3.1
未来はここから始まる――

大人気少年漫画「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」を実写映像化したシリーズ。本作は原作の「人誅編」をベースにした最終章2部作の1作目であり、シリーズ4作目にあたります。

シリーズ最終章に相応しい殺陣のシーンはお見事でした。シリーズ屈指のアクションではないか?と思うくらいに緋村剣心役を演じる佐藤健さんなどが体を張ったアクションをしていました。よく走り回れるな…と感心しました。

今回の敵である雪代縁役を演じる新田真剣佑さんも冒頭の列車の掴みから良く、終盤の剣心との戦いは白熱したものがありました。また原作にはない見せ場として、巻町操役の土屋太鳳さんや瀬田宗次郎役の神木隆之介さんも登場し、シリーズ最後のお祭りに華を出しました。

少年漫画の実写作品としては、成功した作品であることに間違いないクオリティになっていました。

ここから不満点。本作に限らず、シリーズ全てに言えることなのですが、ドラマとキャラクターの扱いが酷い。特にドラマ部分では原作の「人誅編」は、重みのある物語なのですが、本作には雰囲気しかなかった。剣心が人斬り抜刀斎であった過去と向き合い、その犠牲者である雪代縁から同じ目に遭い、落ちぶれるが、今一度、剣を持つ覚悟と決意のあるドラマがなくなった。結果、雪代縁が剣心の近くを襲う野蛮な人としてしか描かれてなかった。

またキャラクターは、雪代縁の私怨の重さを薄く描いた結果、ただの狂言回しになったし、新キャラについては何も描いていない。138分という短い尺で詰め込みになるとは言え、せっかくの原作があるのに、キャラを外見だけ真似たコスプレだけにしとくのは勿体ない。

正直、原作のドラマ部分をないがしろにしているのなら、続編はいくらでも作れてしまう。映画として倒すべき敵がいれば、アクションとしては申し分ないので、それで観ることはできるのだ。

総括としては、良い部分もあるが、その良い部分を活かすために悪い部分も同じくらいある非常に惜しい作品でした。もしかしたら本シリーズは、原作未読の人の方が、純粋なアクションとして楽しめる作品なのかもしれません。
ゼロ

ゼロ