シネマスナイパーF

新感染半島 ファイナル・ステージのシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

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列車という舞台を最大限に活かしたスリリングでスピーディな展開、思いの外繊細な人間描写、あまりに美しいエンディングと、予想を遥かに超える傑作だった前作
だから続編なんかいらないんです
そんなことは作り手が一番わかっていたと、観て確信
こんだけ吹っ切れてると本当に気持ちがいい
ジャンル映画らしからぬ出来の良さが評価された奇跡のような作品に、これまた素晴らしい続編を付ける…これは至難の業
開き直り、良くも悪くも並べるに値しない映画のつもりで作ったんだろうな
映画一本作るにあたってその志はどうなんだってのもごもっともですが、個人的にはありですね
また、前作は邦題ちょっと他になかったのかと思いましたが、今作に関しては邦題が良い味出してるから結果オーライ


超マッドマックスであり、ニューヨーク1997っぽさもあるね
一応主人公である男にあまり主人公感が無く、周りや環境の方がよっぽど主張が強い
女性が超頑張るのが怒りのデスロードっぽい
話はタイムリミットまでにブツ持ってこい系で、まあぶっちゃけ中身はちゃちなもんですよ
マクガフィンというか最早シンプルにカネだし
ものすごく記号的なキャラクターや描写ばかりで、掘り下げは浅いし厚さもないですよ
伊藤健太郎に少し高橋一生を混ぜたようなク・ギョファンさん演じるソ大尉は怪演も重なり少し笑ってしまうようなキャラクター
ただ、コテコテすぎて良い
カン・ドンウォンは地味だけど決して埋もれないヒーローとしてベストなキャスティングだと思うし、観た人全員が度肝を抜かれる最強のドライビングガールのジュニを演じるイ・レさんの顔を忘れることはないでしょう
早くも今年ナンバーワンヒロイン候補が現れたな

昼間の明るいシーンがほとんどで、セットを盛大に組み非常にリアリティを持った世界を作り上げていた前作
対して今作は、暗い夜のシーンが多く、カーチェイス等は惜しげもなくCGでド派手に展開
月明かりに照らされたガラスの中に詰め込まれたゾンビ、夜空の雲に輝く複数の照明弾等、超現実的な画が次から次へと展開され、これぞ終末映画!!という気持ちよさを常に味わえる
後ろから照明を焚かれながらの爆速カーチェイスで迷いもなくゾンビの群れを撥ねていく映像には、心の中で手を叩いて喜びましたよ
身に迫る切実な緊迫感が心を揺さぶった前作とガラリと印象が変わりましたね〜
これこれ!こういうの好きなんだよ男は!って感じのサバイバルゲーム場は、その全てが最高である
631部隊周りには女性が全くと言っていいほど登場しないのも、不自然ではあるけど変な気持ちにならずに済んで観やすいよね
ただ、スクリーンに映るものがすごすぎただけに、音楽が割と大人しめだったのが少し残念


前作からのお話の繋がりがほぼない分、映画の持つ極端な「らしさ」はキープ
相変わらず、速い
新年一発目でこのスピード感見せられちゃうと、この一年どれを観ても物足りなさを感じそうだよ
車もゾンビもとにかく速い
ただ、それでも見辛くなっていない、むしろ全くストレスがないと感じるのは流石アニメーション出身の監督といったところ
ゾンビからは逃げ一方に近かった前作に対して今作は突っ込んでいくってのはわかりやすい違いだったな

そして、親子愛という軸
やっぱそこに帰結してくのねと思いながらも、前作の結末を知っているだけに今回はこうきたかと不覚にも泣きそうになりました
やたらと引っ張るなぁ早く引き金引こうよと思っていたら、まさかのね
地味すぎる伏線をやたらと大仰に回収するの強引すぎて失笑一歩手前だったけども、オープニングの船のくだりを大袈裟にしたのが結構効いてて良きかな良きかな
数段構えのクライマックス、アンディ・サーキスっぽいおじさんが最後に美味しい役だったな


正直、絶望の中の希望の描き方が素晴らしすぎた前作のラストからこんなものが生まれてしまったことに対して、少し居心地の悪さはありますよ
でも面白かったから許す!
マ・ドンソク、コン・ユ、列車が無い中よく頑張った
ゾンビ面をかなり真面目に勉強して展開しながらも、主軸はそこじゃないんですよ実はというところは変わっておらず、この監督は信頼できるぞ
題材が題材なだけに声を大にして喜ぶのは憚られるところではありますが、新年の景気づけに良い一本ではないでしょうか
前作は本当に傑作なんで、是非チェックしてから、このファイナルステージにも足を運んでいただければと思います!