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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ 完全版のtakのレビュー・感想・評価

4.0
むかーし観たのと時系列が変わってる編集なので、印象が全く違う。暗黒街を生きてきた男の年代記は、手を染めてきた犯罪と壊れゆく友情と踏みにじってきた人間関係の記録。この完全版で観ると、同じシーンでも、主人公ヌードルスのその頃への思いが加わった上で目にするから僕らの受け止め方がガラッと変わる。若気の至り。譲れなかった思い。

この映画のオリジナル版を観た時は、長尺のギャング映画だったら「ゴッドファーザー」にはやっぱり敵わないと思った。この映画は、ひとりの男の犯罪歴クロニクル。血の気の多いキャラクターも好きになれないし、エリザベス・マクガヴァンをロバート・デ・ニーロが手ごめにする場面で嫌悪感を抱いたのも大きい。そんないけ好かない男が歳とって昔を思い出すだけの映画じゃねえか、と思った。

完全版を観ると、悪事の回想のお話なのは変わらないのだけれど、その過去の行いへの後悔や若かった自分への自嘲がより一層感じられる。観ている自分も歳くって、時折昔のバカな自分を思い返してしまうだけに、そう感じられるようになったのかもしれない。ジェニファー・コネリーが名曲アマポーラで踊るシーンばっかり何度も観たな、そういえば(恥)。

改めて観ると、霧の立ち込める橋の映像に代表される映像の陶酔感とエンニオ・モリコーネの音楽がものすごく心に染みる。パンフルート奏者ザンフィルを起用した楽曲が、霧の風景に重なる場面のゾクッとする美しさ。タランティーノのモリコーネ、レオーネ好きは周知だけど、きっとこの映画を見てパンフルートの哀愁漂う音色を使いたい!と思ったに違いない。「キル・ビルvol.1」ではザンフィルの代表作であるLonely Shepherdが印象的に使われているんだもの。
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