人間の軽率さと泥臭さ、えぐさと温かさが隣り合わせにある作品でした。
ふせえり演じるお母さんの「ずっとスマホのことがんばっとったやない」という言葉(うろ覚えだけどそんなニュアンス)が、SNSもハンドボールも分からないなりに、息子の生き生きした姿をただ純粋に嬉しく思い、自分もそんな息子に励まされてきたという慈しみや愛情が詰まっていて涙腺決壊しました。
マサオが『裏切った、怒られる』と思った相手がマサオを責めるどころか、むしろマサオたちのために怒り狂う姿からは、そこに一緒に生きている人たちにしかわからないものがあるのだなと思わされました。
(無論、彼はマサオたちの日々を見てきていますから、彼らが本物の努力を始めて変わってきた姿を知っていたというのも大きいでしょう)
仲間を引き戻そうとするマサオを冷笑する同級生がリアルで痛々しくて、あの苦々しさを入れることでこの映画を爽やかスポ根青春ドラマで終わらせるつもりはないという作り手のこだわりが見えた気がします。
マサオと先生の踏切のシーンが衝撃すぎて、あの場面の意味を映画館を出てからもずっと考えてます。
感染症を懸念するこのご時世というのもあって映画館の客数は少なかったのですが、
人間の力じゃどうにもならない、明確な正解や行き先が存在しなくて誰のせいにもできなくて、漠然と大きな何かを失って諦めなければならない今だからこそ、この映画を見られてよかったと思いました。