EDDIE

#ハンド全力のEDDIEのレビュー・感想・評価

#ハンド全力(2020年製作の映画)
4.3
これぞ青春!最高に熱くなれるスポーツ映画。SNSの影響力の強さと怖さ両方を見せつけられ、一度挫折しつつも人との繋がりを持って強く前を向く主人公の成長に心がときめく。楽しい現場だったんだろうと役者全員の演技から感じられる心温まる作品。

とても想像を超えた素晴らしい作品でした。元々鑑賞予定のリストにも入れていなかった作品でしたが、信頼ある映画ブロガーさんが絶賛されていたのとキャストを見て是非とも観てみたいと思わされたのがきっかけです。
だってこども店長の加藤清史郎くんと鈴木福くんが高校生役ですよ。もう彼らの成長スピードに驚くと共に、彼らが子役をしていた頃からそんなに時間が経ったのかと驚きが隠せません。他にも近年の若手では出ているだけで全幅の信頼がある仲野太賀が出演しているので興味をそそられたという具合です。

本作は2016年に未曾有の大地震に見舞われた熊本の復興を一つのテーマとし、高校生たちの心の成長をSNSとの付き合い方を絡めて描いたスポーツ青春映画です。
加藤清史郎が演じるのは主人公の清田マサオ。スマホ中毒の今時の高校生の彼は帰宅部で特に夢中になれることもありません。醍醐虎太朗演じる親友の岡本とともに、SNSにUPしたとある写真をきっかけに一躍有名人に。フォロワーが鰻登りに増えたことにより、彼らはさらなる注目を浴びようと“#ハンド全力”のハッシュタグを使い、いいね稼ぎに奔走します。
特に進学や就職の希望もないマサオは突然やり甲斐を持ってSNSの投稿に躍起になっていくわけですね。

このSNSとの付き合い方が一つの過ちだけで被災地復興のための応援の声から一気に炎上し酷評の嵐に。
ハンド全力というタイトルとは裏腹に、主人公たちはなかなかハンドボールには全力になりません。
よくある話で、例えば地元からスターになったプロスポーツ選手や芸能人なんかがいたら、地元の星だとか応援するってことあると思います。もちろん応援される側はきっとそれが力にもなるのかもしれませんが、結果が出なければ応援している側は勝手にガッカリしたりするわけですよね。
本作でも一つの過ちをきっかけに勝手にガッカリして裏切られた一般層の意見が炎上して出てきます。これって本当に応援している側が勝手に盛り上がったり、勝手に盛り下がったりしているだけなんですよね。
ある意味ちょっと自分がそういうことないか自己反省のきっかけともなる作品でした。

とはいえ決して重苦しい作品ではなく、高校生の青春が満載に詰まっていて、特に男子ハンドボール部の部員のみんなの絡みが面白くて、自分が学生時代とかも思い出したりしてなんだか羨ましくも感じました。
何というか同世代の俳優たちが集まっていたこともあってか、きっとこの現場楽しかったんだろうなと。
みんなで女子高生のスカート覗いたり、銭湯でバカみたいに騒いだり、なんか男子校生の青春だなーみたいな。

それにしても子役時代の加藤清史郎くんしか知らないので、こんなに演技がしっかりしているとは嬉しい誤算でした。鈴木福くんは高校生になっても福くんのまんまなところが好印象で、他にも部長の島田役の佐藤緋美は彼の暑苦しさがとても良くて、みんな個性的で本当に観てて楽しかったです。
女子ハンドボール部の七尾役の芋生悠や黒澤役の蒔田彩珠もそれぞれ魅力的な雰囲気を放っており、芋生悠はまさにヒロイン的雰囲気、蒔田彩珠は目の奥に闇を抱えているようなだけど強い意思を持った女性を演じていました。

九州出身者としてはおたこぷーの出演も嬉しかったですし、芸人のデニス植野行雄は存在感を発揮しました。
ほか、脇役でも存在感を放っていたのがマサオのアニウエ役の仲野太賀は素晴らしかったですね。彼の持ち前の明るさが生きた役柄でした。その彼女テルテル役には志田未来で、これまでのイメージとは打って変わってなギャルの役を演じていました。
女子ハンドボール部顧問の市川役は安達祐実。彼女の少し経験を積んだ大人な雰囲気と気の強さ、ちょっとしたお茶目なところも見ていて微笑ましかったほどです。

ラストの解釈は人によって感じ方は変わるでしょうが、とても良い終わり方だったと思います。正直試合の結果どうこうよりもそれまでのアプローチが大事なのかなと。

今年の青春映画は傑作が相次いでいます。青春映画はかつての自分を思い出したり、中年層でも転機にあるときは意外に心に響いたりするので無視できないジャンルです。本作はさほど注目度は高くないですが、とても見応えがありオススメのスポーツ青春映画です!

※2020年劇場鑑賞92本目
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