DDD

#ハンド全力のDDDのネタバレレビュー・内容・結末

#ハンド全力(2020年製作の映画)
1.1

このレビューはネタバレを含みます

熊本地震から3年、いまだ立ち並ぶ仮設住宅に暮らす主人公がかつて所属していたハンドボール部の写真をインスタに投稿して熊本のハッシュタグをつけたところで、投稿がバズる。
そこで投稿を続ける中で高校内で話題になりハンド部に入部、となるのはわかりやすい展開なのだがそこから主人公たちはスポーツではなくインスタの投稿に熱を上げる。
スポーツを練習で大変な思いをするよりインスタでたくさんいいねを貰う方が簡単だし気持ちはわからないでもないが、元々一人になってしまった男子ハンド部部長までインスタに協力するのはわからない。
同級生などを集めて試合を成立させられる7人になってもちっとも練習をしない。インスタがバズってテレビ取材まで入るのに練習をせず、試合は練習試合はボロ負け。
そうなったらディスのコメントなどが入りそうなものなのに、相手高校へのディスが入るなど、ネットでの賛否が不自然すぎる。
映画が一時間をすぎたところで主人公が最初に挙げたハンド全力の投稿の加工動画がアップされてしまい、それで一気にディス一色になったところでようやく批判の目が主人公たちに入るのだが、それも不自然。どうしてそれが投稿されてしまったのかの説明がない。男子部のメンバーに避難されたら言い訳のように間違って挙げてしまったことを言うのではないだろうか。地震の被災をやらせっぽく使ったことに非難が集まること自体はありえるが、展開が不自然すぎる。

展開が不自然でいえば、震災泥棒の話も不自然すぎる。作品序盤、地震被害に遭った家に携帯を取りに入った主人公が自分の家に入っていた泥棒に遭遇するシーンが入るのだが、それがよりによって男子部の顧問のように想起させるシーンが後半に入る。教師の言葉や酷似するサンダルを含む容姿から、あの時の泥棒がその教師であるかのように示されるのだが、結局それに対して主人公は言葉を呑んでしまう。
震災泥棒は許されることではないのだが、それを収入が途絶えるわけではないだろう高校の教師がやっていたらなおさら非難の対象となるだろう。一方で、被災して何が落ちているかもわからない被災した家にサンダルで入るとも思えない。そうであればその教師が泥棒であることも疑わしいのだが、だったらどうしてそんなシーンが必要なのか。生きていくことは大変、といったようなその時泥棒が言ったメッセージを挿入したかったのだろうか。だとしてもこの形は無理があるように感じた。
あと、時間経過として作品の中盤で仮設住宅を出るかもしれない、と主人公が両親に告げられるのに、インターハイ予選試合直前になってその話を断ろうと言い出すのも不自然である。作品内では一ヶ月二か月経過しているのではないのか。同様に主人公の両親が、息子が中学のときから所属していたハンドボールについて「ドッジボール?」と何度も聞くのもおかしい。思春期の息子とちゃんと気持ちが通い合っているシーンがあるのにその息子の部活の競技名を覚えないなんてことがあるだろうか。ボケているギャグのつもりかもしれないが、主人公が訂正も何も入れないので両親の狙いすらわからない。

練習に熱が入るようになったのは、誤投稿直前と再結成後のせいぜい一ヶ月程度だろうか。
その程度でうまくなるとは思えないから試合は負けて当然だったと思うが、結局インターハイ予選の試合は少し映された程度で試合結果を収めずに終わる。
今作はハンドボールの映画ではなく「うだうだ男子高生のリアル青春映画」なのかもしれない。それにしたってハンドボールの取り上げ方が雑すぎるのではないだろうか。
長くない制作・撮影期間で出演者がハンドボールを見せられるようにはならなかったかもしれない。しかし、そうであっても試合結果をきちんと描くなどちゃんと向き合うことはできたはずである。
インスタ映えばかりを気にした主人公たちの姿そのままの、見かけばかりを気にしたような内容だった。それではダメだと登場人物に語らせてすらいるのに、どうして映画制作陣が同じことをしているのか。
役者陣の演技はよかっただけに脚本・演出のいい加減さに呆れる。

最後に、今作にも「冷蔵庫の女」がいたことを記しておきたい。
序盤から主人公たちに声かけをし、インスタでももてはやされた女子部のエースが試合中にけがを負ってしまいインターハイ出場は絶望に。
それが以前人数不足の男子部をフォローするように入った校内試合での転倒と同じ部位のため主人公が自分のせいじゃないかと心をいためるのだが、この描写はどうしても必要だったのだろうか。
男子のために女子が犠牲になってはいないだろうか。
男子部員7人中、一人は女子エースの弟という1年生かつ運動があまりできない、という設定があるのだから怪我人が入れたかったら、男子は8人でその中の誰かがけがをして控えの弟が出場という展開でもよかったはずである。
けがをしても健気にみんなを応援する女子、というステレオタイプな女の子を登場させる意図を感じたのだが、考えすぎだろうか。
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