SNG

あなたの名前を呼べたならのSNGのネタバレレビュー・内容・結末

あなたの名前を呼べたなら(2018年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

いい映画でした。
インドのカーストや風習については学校でふんわり勉強した程度にしか知らないんだけど、建設会社の御曹司と、メイドの女性との身分違いの恋の話。
建設会社の御曹司アシュヴィンは、アメリカから帰って婚約者と結婚予定だったものの、婚約者が結婚間際に浮気をして破談。
新婚夫婦の家庭でメイドをするはずだった地方の農村の未亡人ラトナは、大きな家で一人暮らしとなったアシュヴィンのメイドとして働くことになる。
婚約者の浮気で傷心のアシュヴィンに、ラトナは19歳になってすぐに親に結婚相手を決められ、病を患っていた結婚相手は結婚して四ヶ月で亡くなり19歳で未亡人となった話をする。
地方の農村で未亡人には人権がない。人生が終わったものとして扱われるけれど、ラトナは今メイドとして働いていて、賃金で妹を学校へ行かせている。
結婚の失敗が人生の全てではないというかのような話をして、アシュヴィンを遠回しに慰めるラトナ。
ラトナはメイドをしながら裁縫の勉強をして、将来はファッションデザイナーになりたいという。
風習でガチガチのインド社会において夢を追い、自分を気遣って控えめな優しさをくれるラトナに、アシュヴィンはだんだんと惹かれていく。
ラトナも、メイドだからといって見下さず、人として対等に扱ってくれるアシュヴィンにだんだんと惹かれていく。
けれどそこは身分違いの恋。ラトナに想いを伝えて自分と共にきてほしいというアシュヴィンを、ラトナは頑なに受け入れない。
一緒にでかけなどしたら周りに笑われてしまう。
夫の家族が自分を街へと送り出したのは口減らしのため。仕事先の主人と過ちを犯したとあっては村へ連れ戻され二度と再起ができない。アシュヴィンの母親だって、長男を亡くした後に次男まで、メイドの女と一緒になって家から出奔したとなってはどう感じるか。
あくまで、ラトナとアシュヴィンは、メイドと旦那様の関係なのだと一線をひいて、これ以上拗らせる前にと仕事をやめて農村へ帰ってしまう。
アシュヴィンはラトナへの想いを断ち切るため、再びアメリカへ行くことを決意。
しかしアシュヴィンは旅立つ前、ラトナのためにあるプレゼントを用意していて……という話。
生まれ育った時からそうあるべきものとして、身分や風習があって、それを断ち切るというのは一筋縄ではいかないことなんだと思う。
アメリカで育ち、「持つもの」の立場であるアシュヴィンよりもラトナの方が、この恋に身を投じるには、よほど危険でなくすものが多い。ファッションデザイナーになりたいと夢を追っていても、その実、ラトナ自身の方が、ファッションデザイナーとして好きな職業に身を置く自分を想像することができなかったのではないかなと思ったりした。
風習や制度のなかでがんじがらめになっている彼女の背中をそっと押してくれるかのようなアシュヴィンのプレゼント、とてもよかった。
そうして一歩、農村の未亡人から、夢を追う女性として歩き出したラトナ。
最後にアシュヴィンと初めて向き合ってくれるようなラストはこれからを想像する余地があってとてもとてもよかった。
あなたの名前が呼べたならというタイトルは結末を知るとものすごくエモい。
映画自体は淡々としてるんだけど、優しくて良いお話だった。
あとインドの映画はじめて見て、踊ると聞いてたけど本当に踊るんだなと思いました。
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