シズヲ

Guava Islandのシズヲのレビュー・感想・評価

Guava Island(2019年製作の映画)
3.5
南国の島を舞台に描かれる中編映画。アマプラによればスリラーらしいが、言われてみれば終盤はそんな感じの緊張感がある。ドナルド・グローヴァーが全編に渡って歌唱を披露する他、音楽に縁の深いリアーナやヒロ・ムライなどが参加していることもあって、グローヴァー=チャイルディッシュ・ガンビーノのプロモーション映画的な味わいがある。

神秘的なルーツを持つ孤島の楽園、支配者の出現による抑圧、自由を取り戻そうとする解放者。シンプルな筋書きによって紡がれる内容は歌と異国情緒に彩られ、何処か神話のような趣を生み出している。冒頭の鮮やかでエキゾチックなアニメーションがそういった雰囲気をより際立たせる。キューバで撮影したとされる南国の情景や色彩はとても印象深い。

歌という一種のカウンター・カルチャーによる反抗を描き、ラストは“意志の継承”による魂の解放を成し遂げる。中盤での「アメリカで自由を手に入れる」「ここがアメリカだ」という遣り取りが印象的で、あの島の現状を示すと同時に資本主義という概念によって齎される画一性と搾取性が端的に皮肉られている。
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