このレビューはネタバレを含みます
原作の小説は、じわじわ点が繋がっていって徐々にゾワゾワして切なさが広がってくるのですが、その雰囲気を出せていたような気がします。
特に自分の声だと気付く俊也のシーンは、ホラーのようなゾクッと感があるのですが、映画でも見事でした。
英士の最初の踏み込まないスタンスも、俊也の戸惑う感情も、小栗旬と星野源は上手く表現していました。
そして何よりも、俳優陣の「声の良さ」
宇崎竜童、木場勝巳、塩見三省、梶芽衣子、堀内正美、火野正平…経った数分しかない役の人達も本当に見事でした。
市川実日子の妻の演技も良かったです。
昭和のシーンやテーラーなど、美術などにこだわっているのが感じられました。
あとキャスティング。生島父娘や曽根親子、どことなく似ていました。
聡一郎の子供時代と大人も、面影がちゃんとありました。
宇野祥平さん演じる聡一郎の、理不尽で切羽詰まった人生しか生きてこられなかったという背景を一瞬で感じさせる演技が見事でした。本当に切なかった。
また宇崎竜童と梶芽衣子の「闘争」を感じさせる演技も凄いなと思いました。あの時代に直接触れた人にしか表現できないのではと思いました。
そこまでダイナミックでもなく、盛り上がりに欠けると言われればそれまでだけれども、
あの事件には理不尽に巻き込まれた被害者(望)がいて、色んな哀しみを背負いながら生きてきた子供(聡一郎)がいて、これからもあの事件を背負いながら生きていく子供(俊也)がいる、そしてその人生に触れた人達がいるという、一言では言い表せない感情を表現できていると思いました。
