shiho

罪の声のshihoのレビュー・感想・評価

罪の声(2020年製作の映画)
3.0
長いわりに主題が定まっておらず、登場人物に共感も出来ず、ただただ説明を追いかけるのに頭を使わされそのわりにモヤモヤが残った。単純に脚本がダメだと思った。

小栗旬演じる主人公の新聞記者をメインにした記者勢のジャーナリズムが中途半端で、同じ記者を扱った「クライマーズ・ハイ」とか「スポットライト」とかと比べて薄っぺらさを感じた。特に小栗はずっと調子が軽くて、かつては情熱があったけど色々嫌になって社会部から遠ざかっていた記者が小さな弱き者の声を聞いて何かを変えようとする情熱や正義感が再燃した、という図にはどうしても見えなかった。
なんだか小栗本人も映画の脚本やストーリーに納得いかないまま撮影したんじゃないかなと思った。そのくらいこの記者の人物像がわからなくて、強い台詞を言っても宙に浮いているような軽さだった。
小栗のせいだけじゃないけど、こりゃ主演男優賞は獲れん内容だなと思った。

星野源演じるテーラーの男は色んな人に簡単に素性を言い過ぎだし、人を信じすぎ。お人好しキャラなんだろうけど、妻と子がいると何度も言うわりには自分は過去の大事件の犯人に近しい者だと名刺渡しながら話して回るというリスクの高い行動をしていて説得力がない。そしてインタビューされた人々もペラペラ喋りすぎ。ここまで黙っていたのなら我が身かわいさに話してくれない人の方が多いと思う。

この小栗と星野源のムズムズするような胡散臭いやり取りを見ているのがキツかった。

色んな人から話を聞いて次々繋がってく流れももう少し前後を説明しないと、観ている人が置いてけぼりになると思う。映画館で字幕なし・巻き戻し出来ない縛りで見たらちんぷんかんぷんじゃなかろうか。

ここに書いた以外にもツッコミどころは多かった。結局のところ親の身勝手は家族の人生を壊すってことと、壊した本人は言われないとそこまで罪の重さを感じてないってこと。
でもその親だって理不尽に奪われた怒りが溜まっていたって言われればまぁそうだよね、ダメだけどねわかるよとも思っていたところだけど、一番被害に合ってるのは社会の恨みとか関係なく単純に悪さして金儲けしたかった男の妻子っていうがなんとも話として収拾つかんなと。

エンディングで流れた曲も歌詞がギュウギュウで何も入ってこなくて、情報量多いわりに釈然としないこの映画を表しているなと思った。

話題になっている社会派風の映画でこれかぁ、とガッカリした気持ち。
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