月見

罪の声の月見のレビュー・感想・評価

罪の声(2020年製作の映画)
4.0
時効になった35年前の事件に声を使われた曽根。
自分が口を開けば多くの人の胸のつかえが解消される。でも自分の家族は後ろ指指されることになるかもしれない。
それでも真相を確かめたい曽根と、社会部記者を辞め今はもう世の中に訴えたいことなんてないと言いつつも熱い思いを取り戻していく阿久津。

何れにしても自己満足なのだろうか。そんな葛藤の中様々な思いが深く重くのしかかってくる。

息子を不幸にしかしない犯行のテープをそっと取っておいた母。何故取って置くんだとも思ったが、母にも捨てられない熱い思いはあったことがわかる。
結果的にそれを曽根が見つけたことにより多くの人の胸のつかえを取っていくことになるが。

一方で犯行に使われた声でさえも母にとってはもう居ない大切な娘を確認する唯一のものだったりもした。

誰かの正義の為、誰かの金儲けの為に、それが巨額であるほど無関係な大勢が背負い、不幸になっていく。学生運動を下らないと言う側も浅はかだが、真の正義の為に社会に一石を投じたい真っ直ぐな思いは多くの犠牲も見えなくなっていくんだと思う。
『そんなものは正義じゃない。』
阿久津の言葉が胸に刺さる。

世の中には真相を知らない方が良いこともあるんだろうけど、真相を知ることで救われる人も大勢いるということも忘れてはいけない。
重厚感のある映画だった。
月見

月見