ひれんじゃく

罪の声のひれんじゃくのレビュー・感想・評価

罪の声(2020年製作の映画)
4.0
 おすすめの映画あります?と聞いたら部長に教えていただいた一作。本当にありがとうございます。メチャクチャ面白かったです。よい邦画を引きました。

 グリコ・森永事件のことは知ってはいたけど、あくまで「未解決事件」としか。声を使われた子供がいて、その人たちの人生はどうなって…というところにまで全く思いが至らなかった。そういう意味で着眼点がすごい作品。基本邦画には期待をしないスタンス(失礼)なんだけど、登場人物が叫び出さないだけでこんなにストレスフリーに観られるのだと感激した。強いていうなら皆さんもっと腹から声を出してください………

 演出というか余白の取り方が上手いように思えて(誰目線)、最初に自分の声があの子供の声だと判明するシーンとか一緒になって恐怖に震えられたし夢半ばで犠牲になった姉を語るシーンでは一緒になって涙を流すことができた。没入ができた。人生を無茶苦茶にされた本人を含む関係者たちの無念、報道陣の高まる緊張感みたいなものにどっぷりと浸かれた。未解決事件の被害者のことを考えずにエンタメ的に取り扱ってきた報道の罪、というテーマも伝わってきた。正直未解決事件が持つ独特の雰囲気は、部外者からすると魅力的に映ってしまう部分も大いにあると思ってしまうけれど、その事件の裏には必ず加害者と被害者がいるっていうその当たり前のことを忘れてはしないか?という問いかけ。未解決の殺人事件のように直接的に人の命が奪われたという形でなくとも、事件で苦しんだ人たちがいるということを理解した上で敢えてエンタメとして消費しているのか?という問いかけ。

 全部セリフで喋らせなくても行けるじゃないですか。こういう邦画が観たいのです。
ひれんじゃく

ひれんじゃく