TAK44マグナム

パーフェクションのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

パーフェクション(2018年製作の映画)
3.7
世にも過激で勝手な人助け。


「ゲットアウト」の彼女役だったアリソン・ウィリアムズが主演するゲテモノなスリラー。
先の展開が突拍子もなくて、ともすれば置いてけぼりにされかねない変態の宴みたいな映画でしたよ。
タイトルの「パーフェクション」とは、ズバリいって「完璧・完全」という意味で、本作においてはチェロを完璧に演奏しなければならない「奏者の頂点」を表しているのかと思います。
「トレマーズ」の舞台となる街の名称もパーフェクションでしたが、当然ですが全く関係はありません。


将来有望なチェロ奏者だったシャーロットは、母親の看護のためにその道を絶たれた。
時が過ぎ、母親が亡くなるとシャーロットは恩師であるアントンに連絡をとり、やがて上海で再会する。
そこでは、かつてのシャーロットの様に有望な子供たちが奨学生のなるための審査が行われており、特別ゲストとしてリジーも参加していた。
リジーこそ、シャーロットと入れ替わりに入学をはたし、今では学校の顔として世界中で演奏するナンバーワン奏者であった。
リジーとシャーロットは惹かれ合い、ベッドを共にする。
翌朝、体調の優れないリジーであったが、せっかくの休暇を満喫するべくシャーロットを連れて旅にでることにした。
心配するシャーロット。
しかし、リジーは旅を強行する。
長距離バスに乗ったは良いが、途中でリジーの体調が急変、激しい嘔吐を繰り返すようになってしまう。
しかも、嘔吐物には大量の蛆虫が混ざり、リジーは気までもが変になってくる。
バスを強制的に降ろされ、途方にくれるシャーロット。
「体の中を虫が這っている!」
気が狂ったように腕をかきむしるリジー。
すると、何ということか、腕のあちこちから虫が這い出てくるではないか。
「これを使えば良いわ」
狼狽するリジーに、シャーロットは言った。
その手には、肉切り包丁が握られていた・・・


・・・ここまでが前半戦ですね。
実際のところ、お話は単純なんですけれど、トリッキーな構成や登場人物の思考や心情が一筋縄でいかないほどコロコロ変わって見えるようになっているので、何だかこんがらがって分かりにくいと思う方もいるかもしれません。
これはわざと複雑に見せているのでしょう。
基本的に、たんなる変態映画ですよ(汗)
どのキャラクターも理解しにくい面を持っていて、主人公でさえにわかには共感できない人物像です。
かなり深刻なまでに精神を病んでますからね。
時折フラッシュバックされる「治療」からして怖い。

正直、前半は明快に気持ち悪さを押しだしているものの、話は読めてしまうので些か興醒めだったのですが、そこから先は更に頭がおかしい展開になって(自分の中では)盛り返しました。
理解するには困難な各キャラクターの言い分を聞くだけでも、面白いほどアホらしい。
閉鎖的な名門学校だからこその狂った感覚が凄絶な復讐に火をつけるわけですが、全てはラストの「二重奏」を見せたいがための「舞台装置」のように思えました。
これって、あの二人でチェロ弾いている画が最初にありきの映画だったんじゃないのかな。


そこまで血飛沫が飛ぶような映画でもありませんが、腕が切断されたり、切り裂かれたりするのはハッキリ見せてしまうタイプです。
でも、本作はグロよりもゲロが圧倒的に気持ち悪い。
前半の中国ではゲロ吐く場面ばかりだし(汗)
しかも蛆虫入りなので、生理的に受け付けない方は観るのを控えた方が良いかもしれません。
腕の中から虫がモゾモゾと大量に出てくるのも「ウェェ〜」となりましたよ。
「ミスト」での、遺体からクモがバラバラと出てくるのも気持ち悪かったですが、これも充分嫌な気分にさせてくれました。
あと、猛ったアル・レオンみたいなバスの運転手も強烈。
気持ちは分かるけど不親切で嫌なヤツだったな〜。

キャスト陣は総じて、やっていることは狂っているのに正常を装っている演技が上手いですね。
アリソン・ウィリアムズの、美しさの中に闇が感じられる目が印象的。
しかし、気になったのがシャーロットの少女時代を演じた女優さんとアリソン・ウィリアムズがあまり似ていない点です。
アリソン・ウィリアムズは美人ですけれど、どちらかというと勇ましい男顔だと思うので系統が違うんじゃないかな。


テーマは、ありきたりですが「抑圧された自我の解放」といったところでしょうか?
NETFLIX映画の中では傑作とまではいかないにしろ、スリラー/ホラーとしては標準点超え。
味噌汁をすすったらコーヒー味だったみたいな、どこか感覚のズレた奇妙さを味わいたい方にオススメ致します。


NETFLIXにて