真田ピロシキ

悪人伝の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

悪人伝(2018年製作の映画)
3.1
最近双極性障害の鬱期がやってきて気力が低下してまして、映画も集中して見るのはやや難しい状態。そういう時には家でマブリーの映画をぼさっと見るのがいい。韓国映画好きなわりにバイオレンス系はそうでもないのですが、この映画は無差別殺人犯がヤクザの親分を襲って、一命を取り留めた親分と刑事が共同で追いかけるという無茶な筋書きが面白い。それにしても一目でヤバいと分かるヤクザでも全く躊躇わず刺すとは気合の入りすぎた無敵の人だ。この殺人鬼にはどうやら親に対する何らかの感情があるようなのだがそこに深く踏み込みはせず、普通のサイコパスと違って弱者以外も襲うと言われているが言葉通り弱者も無差別に理由なく殺すので共感の余地もないモンスター。その上で法廷も弄ぶ。ジョーカーなどより遥かにヤバい奴である。

暴力的な刑事のチームとヤクザが組ごと組んで犯人を探し、途中では兄弟分のように酒を酌み交わす。こうなると両者の違いも希薄で、警察もヤクザも大して変わんねーっと言っている?死刑反対派としては犯人が法廷で詭弁として述べた死刑制度に対する演出は気味が悪く、弁護士に「あんたの家族が殺されたら」なんて言うのは無意味と思うけれど、まるで現実感のないトーンの映画にそんなことを言っても仕方ない。この映画は現実っぽい世界観で人間っぽい奴らが争う話ですから。ジャンルとしては怪獣映画だと思っています。2匹の怪物が向かい合うラストシーンなんてまさしくそれでしょう。こう思えるのは精神状態が良くなく注意散漫だからであって、万全だと『悪魔を見た』みたく「何やってんだコイツら?」とバカバカしく思ってた可能性は高いです。

アクションは多人数入り乱れての近接戦と刃物グサグサ。それとカーチェイス。韓国映画を見るとお馴染みの光景で見応えはあるものの新鮮味はなし。我らがマブリーも気絶するまでのビンタにドアぶち抜きパンチと剛腕を披露してて楽しいのだが、こういうマブリーをそこまで見たいわけでもないんだなあと気づくのだった。