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アメイジング・グレイス アレサ・フランクリンのradioradio526のレビュー・感想・評価

4.0
「張り詰めた緊張感…若かりし女王の挑戦」

「アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン」鑑賞。

1972年ロサンゼルスの教会で行われた「ソウルの女王」アレサ・フランクリンによるゴスペル歌唱のドキュメンタリー作品。
アルバムは300万枚を超えるゴスペル作品の金字塔だが、映画についてはそのままお蔵入りになってしまった。
なんとカットの最初と最後のカチンコが無かった為に音と映像をシンクロ出来ないという初歩的な技術ミスが原因らしい。
実際にアレサ本人も映画公開に難色を示したらしく、長らく日の目を見なかった。

既にソウル界において不動の人気を築いていたアレサにとってルーツと言えるゴスペルは挑戦だったと思う。バックはコーネル・デュプリー、チャック・レイニーら黒人一線級のメンバーであり、幼い頃から旧知のクリーブランド牧師の元での歌唱…それでもこの緊張感はどうだ?
ほとんど笑顔を見せないアレサからピリピリとした緊張感が伝わってくる。
実父の来訪に少しのはにかみ笑いを見せるが、終始和やかさは無かった。

私事で恐縮…20歳過ぎの頃、シカゴからメンフィス、ニューオリンズと当時傾倒していたブルースを聴きに行って、幸運にも田舎町の教会で礼拝と本場のゴスペルを体験したことがある。
そこで感じたのは礼拝が始まる前の和やかさとは別世界の緊張感と興奮だった。
座っていられずに立ち上がる老婆…声をあげる、泣き叫ぶ、ハレルヤ!ジーザス!ある種のトランスと言うべきか…とにかく、血の違いを突きつけられた経験だった。
全然「天使にラブソングを」みたいな感じじゃなかった…正直ちょっと怖かったのだ。

アレサは当然知ってたんだ…あの抜き差しならない雰囲気を。
いくら旧知がいても身体が覚えていたんだろう…それがあの緊張感なんだ。
ストーンズのミック・ジャガーとチャーリー・ワッツが所在なさげに映り込んでいる。
彼らも感じてたんじゃないか?血の違いを。
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