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ストックホルム・ケースのpenのレビュー・感想・評価

ストックホルム・ケース(2018年製作の映画)
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『ブルーに生まれついて』の監督というには冒頭の呑気な雰囲気が対照的でやや驚くものの、銀行に入ってイーサン・ホークが銃を取り出し撃つまでを長回しで撮っているところから、これはこれで楽しめる作品では、という予感を抱く。
見ていくうちにイーサン・ホークとノオミ・ラパスとの関係性に徐々にブルー〜と似た部分も出始めてきて(当然異なる面もある)、2作続けてやってるのはこういった関係性を描くことに拘りがある監督なのかもしれないと思った。

銀行強盗事件で舞台は銀行だけだからと主人公達をあちらこちらに移動させず、ある意味閉鎖された銀行を行きつ戻りつするのが良い。物語が進むにつれて犯人と人質たちの行動範囲がどんどん狭くなっていくが、狭くなればなるほど犯人側と人質側の関係も深まっていくのが面白い。物理的距離と精神的距離がしばらく一致しているが故に、ある時点からたとえ物理的に離れても精神的には近い。これがこの映画のストックホルム症候群の描き方なんだろうと思った。

ある展開によりバレてはいけないことが色々と増えるのだが、狭い部屋の中でも死角を利用して交流を深めていく演出が、長回しや役者の移動を用いて見せていて特に好き。
思い入れというか好きな度合いはブルーに生まれついての方が深いんだけども(その時代の音楽を使うあたり似ている面も多いのではあるが)、作品全体の演出が好きだ。
なのでこの監督の次回作には期待がかかる。
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