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フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊のchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

4.0
珠玉の映像集byウェス・アンダーソンでした!!作りこまれた映像にどこに目線を合わせていいことやら楽しさ全開です。グランド・ブダペスト・ホテル(以下ブダペストホテル)の小説仕立てに対し、本作は編集長からの挨拶、3つのストーリー(記事)、そして編集後記という雑誌を模した構成になっています。一方、画面構成はブダペストホテルの絵本テイストはそのままに、さらに舞台芝居のセットが強く意識されていました。

さて核となる3つのストーリーですが、1話目(ベニチオ・デル・トロ[投獄中の芸術家]、エイドリアン・ブロディ[美術商])が一番面白くて笑えて、2話目(ティモシー・シャラメ[学生活動家]、フランシス・マクドーマンド[記者])、3話目(ジェフリー・ライト[フードライター]、スティーブ・パーク[料理人])と面白さが尻すぼみになる順序になっており評論家からは批判を浴びています。がですな、映像ということで考えると後ろに行くほど盛り上がり、3話目冒頭のお部屋巡りは圧巻。ってことで、完全に映像を第一に考えた映画といって間違いないでしょう。

極め付けは3話目の終盤、ブダペストホテルでいうところのソリのシーンなのですが、おぉそう来たかぁ、ワクワクと夢とノスタルジーが融合された素晴らしい映像シークエンスでした。これは観てのお楽しみに★(評論家先生たちのレビューが結構ネタバレしてるのでご注意を)。が、実はこのシーンは別の見方もあるらしい。私は製作費とか全然わからないのですが、わかる人目線では前述の3話目の冒頭1~2分には莫大な予算がかかっていることが推測され、例の映像は予算不足であのようになったのではとの指摘があります。真相は... どうでもいい、結果が最高。

ブダペストホテルのゼロ君(トニー・レヴォロリ)は1話目に、皆様ご期待のシアーシャ・ローナンは3話目に少しだけ登場します。レア・セドゥの脱ぎっぷりがすげえわ(笑)。ティモシーも彼女ほどではないですが女性陣はうれしいのではないでしょうか?しかしティモシー細いなあ。っていうか2話目のティモシーとフランシス・マクドーマンドの相性がぴったり。またこの二人でなんか共演してほしいな。1話目の二人も演技が光ってました。

ただ映画全体だけでなく各ストーリーでみても、独立したコマ切れ映像をつなぎ合わせ一応ストーリーにしましたぶつ切りですんません感があり、ぐっと物語に入り込めるような感覚に欠け個人的にはブダペストホテルは越えていないと思いました。ですが映像は明らかにパワーアップしてましたよ。エンドロールでは画面の半分は雑誌フレンチ・ディスパッチの表紙集、もう半分に製作陣の名前が一応流れますがもう表紙のイラストにしか目がいきません。めっちゃオシャレでポスター集があったら全部買ってカッコいい額縁に入れて家の壁にずらっと飾りたい。貯金しよ。

余談ですが今回は本編開始前の宣伝・予告編の映画ラインアップががらっと変わっていて、Belfast, C'mon C'mon, Nightmare Alley, West Side Storyとまるで来年のオスカー授賞式。が、雑談でざわざわしていた観客をシーンと釘付けにさせ終わった後にどよめきが上がった予告編は、PTA監督の"Licorice Pizza"です。もう傑作の匂いしかしません。いい映画がいっぱい、コロナ渦を耐えた我々へのご褒美に思えました。
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