Angiii

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊のAngiiiのレビュー・感想・評価

4.5
相変わらずの、いや今までで最高峰であろうウェス・アンダーソン節の炸裂、静と動の対照、彼の色彩はいたれりつくせり。

"The New Yorker"をモデルにしたとある出版社、そこで出版される週刊誌の構成そのものを映画の構造に落とし込んでいる。その主な3部構成である【The Concrete Masterpiece(犯罪芸術家)】、【Revisions to a Manifesto(学生活動家)】、【The Private Dining Room of the Police Commissioner(フードジャーナリスト)】、そして"French Dispatch"の編集長と記者のコミカルな交流を通して新聞社の核心たるジャーナリズム、人間への可愛らしい讃歌を描く。ここでなんとも外せないのが豪華すぎるキャスト陣。ティルダ様からティモシー・シャラメ、ビル・マーレイ、"スリー・ビルボード"でおなじみフランシス・マクドーナンド、ある意味癖の強い彼らをうまく"ウェス・アンダーソンの世界に生きる人々"としてまとめあげている。

ただ、"グランド・ブタペスト・ホテル"以上に展開するウェス・アンダーソンの世界は見方によってはクリシェであると感じる人もいるかもしれない。そして賛否が分かれそうなのが作品後半。その見せ方は奇跡のマリアージュとなるか、単に胸焼けするほどの油分か、かなり危うい橋である。

しかし、神経質とも言えるほどの計算しつくされたすべての色彩、バランス、装飾、音楽と動きは紛れもなく彼にしか編み出せない世界観であるのは間違いない。時代にとらわれない圧倒的なセンスを是非劇場で堪能してほしい。
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