TaiRa

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊のTaiRaのレビュー・感想・評価

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ウェス・アンダーソンがウェス・アンダーソンやってる。

ウェスにとって初のアンソロジーであり、「ザ・ニューヨーカー」とフランス映画への愛と敬意を込めた映画。作品を重ねる毎に情報量が過密になって来たので、こういった形式は丁度いいかも。一続きの長篇でこの密度は疲れそう。今回も画面サイズ変えたり、カラー/モノクロを行き来したり、アニメーションまで組み込まれたり、表現の自由度が更に高い。モノクロからカラーになる瞬間のエモーショナル。歩き出すレア・セドゥ、シアーシャ・ローナンの瞳。ウェスの作品に頻出する、突然の死、もう存在しない場所への慈しみなどは今回もある。いつも「失われた時を求めて」いる作家。このタイミングでジャーナリストたちを描いたのも、ジャーナリズムや雑誌文化が、かつてより力を失っている時代だからか。モデルが存在するジャーナリストによるルポルタージュを描いたフィクションという、微妙にややこしい構造があるんだけど、ジャーナリストの矜持みたいなものを描いててエモい。雑誌の持つ多様性が映画という形に誠実に変換されていた。ウェス的箱庭映画が一番似合いそうな場所=フランスがまるで人形アニメの世界で大変可愛い。アメリカ南部からキャリアがスタートして、ようやく自分に合った場所で映画撮れて良かったね。
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