とむ

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊のとむのレビュー・感想・評価

4.0
ウェス・アンダーソンのフィルモグラフィの中で個人的な最高傑作は「グランド・ブダペスト・ホテル」だと思ってて、
本作を見た後もその評価は変わっていない。

グランド〜は「エンタメ映画としてわかりやすさ」と「監督の性癖」が絶妙なバランスで噛み合ってて、製作者側の独りよがり感が一切ない、本当に見易い一作だと思ってる。
対して今作・フレンチディスパッチは、「監督の性癖」が7で、わかりやすさは3くらいかなぁというのが率直な印象。

ただ、だから悪いと思うのは早計で、
その監督の性癖の閾値がイカれてて、もはや恐怖するレベルなんすよね。
予告編の段階からその片鱗は感じてて、
警備隊が壁ぶっ壊して突入してくるカットの人物の動線や煙埃までもを利用した、
計算に計算をし尽くして、その上でまた計算したみたいな「奥行き」による目線誘導の異常さにはもはや鳥肌がたった。


実際、本編を見てみてもそのこだわりの異常さが垣間見える作風なのは間違い無くて、
突然カラーや画面比率が正直初見だと規則性を見出せない頻度でコロコロと変わったり、果ては突然手書きのアニメーションが始まったりともうめちゃくちゃ。

でもこの破茶滅茶感がウェス・アンダーソンの魅力なんだよなぁとキャッキャしながら観られたので、とにかく素敵な映画でした。


グランド・ブダペスト・ホテルの公開当時に一緒に見た友人が「英語がわからない自分を恨む」って言ってたけど、
今作見たら発狂寸じゃねぇか?ってくらい字幕なんて読んでる暇なかった。
とむ

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