夢里村

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊の夢里村のレビュー・感想・評価

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とても文学的な作品だと感じた。登場人物たちの父である編集長と心血を注いだ雑誌の死、そのグリーフワークのような枠組み。雑誌というメディアの多方向性は市井の人々をとりまく美術、政治、食などを映し出しながら、結局まとまりなく雑誌そのもののみに収斂する。この映画のためだけに作られたような映画、その自立性、目的的な目的性(自己回帰性?)にうちのめされる。何かがこれを貫くとすれば雑誌ニューヨーカーなりフランスのまちなりフランス映画なのであろうが、なんだか野暮ったい。編集長をはじめこの雑誌に関わった者たちにはそれぞれの矜持があり、それが物語として何かに回収されるようなものがあるべき理由など何もない。ただそこに記事にするべき文化や事件があって、人間たちの素晴らしい営みがあるだけだ。
しかし、横移動のショットや直角的なカットバックには瑞々しい驚きが限りなくないな。ウェルメイドゆえというか、この淡白さがウェス・アンダーソン印なんだろうけど。
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