河

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊の河のネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

評価微妙だったから後回しにしてたけど、個人的にはそれ後悔するくらい好きな映画だった。
大枠は『グランドブダペストホテル』と同様に多様で理想郷的なコミュニティが失われてしまう話。各話はバックグラウンドや価値観の違う人々が出来事を通して瞬間的に繋がるという点で共通していて、それを過去の経験として各ライターが語る形になっている。そして3話目のラストでシェフが最後に言う、自分達が探してる失われてしまった何かはその繋がった瞬間、もしくは繋がろうとすること自体なんだろうと感じた。
その瞬間は雑誌の紙面や表紙、過去作られた映画にスナップショットとして収められていて、さらにいえばそれらのメディアが大衆性の高いものだからこそ、歴史とは真逆の形でそれらの瞬間が捉えられている。ただどちらもアーカイブ性が低く、大衆性の高いメディアだからこそ時間が経てば忘れ去られていく。だからこの映画は雑誌っていう形式で、ヌーヴェルヴァーグだったりノワールだったり、過去の映画のパッチワークのような形で作られているいるんだろうと思った。
ウェスアンダーソンが価値観の違う人々同士の和解や繋がりを描いてきた監督で、『グランドブダペストホテル』がそれが今はもう不可能で過去のものになったことを描いた映画だとしたら、この映画はもう一度過去の瞬間からそれを取り戻そうとする映画のように感じた。
その人にしか見えない美しい瞬間みたいなものが何個もあり、それがノスタルジックで希望的でもあるようなこの映画のトーンと合わさっていることに非常に感動した。
各話で主観が別人に変わるからその度慣れないといけない割にどの話も初っ端から文字量が多いし早いしで、さらにその中で前に出たセリフや設定をフリにした展開が連鎖していくので、かなり頭を使う映画にはなってるとは思った。雑誌をパラパラめくってる感覚って事前に調べた時にどっかで読んだけど、理解してないと置いていかれたり面白みがなくなる構成になってるのでそれとは真逆だと感じた。
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