せ

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊のせのレビュー・感想・評価

3.7
久々にウェス・アンダーソン作品。
記事の内容を、書いた記者本人に演じさせる形で視覚的に伝える、という手法が面白い。正に「見る雑誌」である。

いつもながら、美術や雰囲気が最高だった。
最初のカットから最後の最後までずっと画面が美しいのが本当に素晴らしい。
モノクロが多用されていたり画角の変化に法則性がなさそうだったり、今回独自の点もそれなりにあるのだが、中でも一番顕著だったのはアニメーション的な技法で撮られたシーンの多さだと思う。
最終的にアニメそのものが出てきたのには笑った。
エンド・クレジットに出てきた雑誌の表紙達は書籍がグッズにでもなっていないだろうか。めちゃくちゃ手元にほしいのだが。
曲も相変わらず素敵だった。好き。

対してストーリーはウェス・アンダーソンらしさが少なめだったように思う。
家族の話ではなく死の扱いが軽く、短編集的でもあるため、作品全体のドラマはいつもよりかなり薄い。
結局、今作の主人公は舞台になった街"アンニュイ"とフレンチ・ディスパッチ誌そのものであり、誰か具体的な個々人でなければ編集社でもない、という事だったのだろう。

本編と全く関係ない事だが、見ている最中にウェス・アンダーソンの世界展に行けなかったのを思い出して少し落ち込んだ。
コロナなんとかなってくれよ頼む。
せ