このレビューはネタバレを含みます
「なつめ/はち/みよこ」4部作第二作。
「全部私私なんだよ。全部自分だけなんだよ。それじゃ僕には伝わらない」
と紳司は言うのだが、まさしく他者の不在が問題だ。
〈私〉が、〈私〉のために、不幸である〈私〉を憂うことは、それに喜びを感じても自分の幸せにはならないから悪だ。さらにこの悪は自己完結しているから、他者が関わることも伝わることもない。むしろ自死へと結論し、他者を悲しませるのだから害でしかない。
ボールは彼女に「突き射さった」。死をもって彼に突き射すのではなく、別の仕方で。