櫻イミト

典座 -TENZO-の櫻イミトのレビュー・感想・評価

典座 -TENZO-(2019年製作の映画)
2.5
監督のいとこの僧侶を主役に、空族が禅仏教を取り上げた作品。結論から言うと、日本の仏教をバカにしてディスっているように見えてしまった(本当にディスっているのかもしれない)。僧侶の芝居や映像の小細工もいただけないが、最も大きな原因は信者側の切実な視点が皆無だから。「サウダーヂ」「バンコクナイツ」ではタイ仏教が重要な要素として組み込まれていて、どちらも信者側である在日キャバ嬢やタイ娼婦の切実な願いの対象として描かれていた。しかし今作は日本の仏職者の現状をさらりとなぞるだけで切込みが浅く、制作者の共感があまり伝わってこなかった。これまでの空族の映画は制作者自らの不良体験(キャバクラ、ドラッグ)を血肉として表し、そこが魅力となっていた。今回はさらにクリエイティブの枠を広げるかと期待したが、こちらの勝手な見当違いだったようだ。(日本仏教をディスろうとしているのであれば凄いが)。空族は山梨映画なのだし、宗教を取り上げるのであれば旧上九一色村にあったオウム真理教にまつわる映画が観てみたい。
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