TAK44マグナム

見えない目撃者のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

見えない目撃者(2019年製作の映画)
4.8
見えないからこそ分かった。


吉岡里帆主演の猟奇サスペンス。
韓国映画「ブラインド」、それをリメイクした中国映画「見えない目撃者」を更にリメイクしたもので、この調子でいったら台湾やインドでもリメイクされてアジア制覇できるネタなんじゃないですかね(笑)
当初は日本オリジナルでもないし、吉岡里帆のとりたててファンでもないしとスルーを決めこんでいたものの、中々の評判の良さが漏れ伝わってきまして。
いざ観よう!と劇場を探したら短い上映期間が既に終わっていたというね(汗)
それでレンタルが開始されて早速、鑑賞してみたのですが、これはドンピシャ!
面白かったです!
邦画の猟奇的なサスペンス・スリラーとしては、すこぶる観易くて楽しめる作品でした!
「目撃者」なのに「見えない」。
でも、「見えない」からこそ「分かる」。
このアイデアが、まず宜しい!


優秀な警察官として将来を有望視されていた主人公が交通事故を起こしてしまいます。その事故で弟を失い、自身は視力を失ってしまった彼女は警察を辞めていましたが、ある日、助けを求める女子高生の声を聞きます。
視力をなくした代わりに他の感覚が鋭くなっていた主人公は女子高生が車で拉致されたと悟り、それを警察に訴えますが明確な証拠がないので話半分でしか聞いてもらえません。
しかし、もうひとりの目撃者である男子高校生の協力を得られ、ついに女子高生を狙う猟奇殺人犯の存在が明るみにでるのでしたが・・・


正直、吉岡里帆は苦手な女優さんでした。
何故かというと、松たか子や高橋一生が出ていたドラマの「カルテット」での彼女の役があまり好きではなかったからなんです。
感情のない目をした、よく分からない役だったので、なんだか怖い女優さんだなぁ・・・などと勝手に思ってしまっていたんですね。
しかし、本作での吉岡里帆はかなり好印象でして、本来は強いはずなのにどこか薄幸そうというか、心に傷を負った元警察官という役がピッタリな雰囲気を身にまとっていました。
「視覚障害者」という難しいのが容易に想像できる役柄も(プロではないので何とも言えないところもあるのですが)パッと見て違和感がなく、目が見えない演技が自然。
ひとりのチャーミングな女性としても、
「写真を撮ってよいですか?」ときかれてOKしたら、盲導犬が可愛いから撮りたかったという場面の、思わず恥ずかしそうになる吉岡里帆の可憐な笑顔はワンちゃんの100倍キュートでしたよ😍
というわけで、本作を観てからというもの、自分の中での吉岡里帆の評価はダダ上がり。
そういえば水着グラビアもやっていたなと思い出して、思わず画像検索しまくってしまいましたよ(苦笑)
メチャクチャ、スタイルがすごい!
着痩せするタイプで、ヤバいぐらい眼福(嬉)
ありがとうございます!(←何が)


それでもって、吉岡里帆がどうとかという以前に本作は大変よく出来ています。ベースとなった映画は未見なのですが、たぶんオリジナル版からして面白いのでしょうね。
だからこそ、こぞってリメイクされるのでしょうけれど、2時間を超える尺なのに無駄な場面が殆ど無い日本版は内外に誇れる出来映えだと思います。
唯一、あまり必要でなさそうな場面に時間を割いていたのでピンときたら、やはり犯人と絡む場面でした。
なので犯人が(犯人としてではなく)登場したらいきなり何となく分かってしまったので、それだけが本作の難点かと。
それと、これも犯人探し要素のある映画の致命的な弱点なのですが、観る方によっては演者で犯人がバレてしまうのもあるので、そこら辺は作り手もうまく処理する必要があると思います。
かといって「ボーンコレクター」みたいに「え?あんた誰?」な犯人でもカタルシスが生まれないので困りますけれど・・・(汗)

犯人さがしの点では些か失敗してしまっていますが、事件が露わになった後半も緊張感ある見せ場が続いてスリリングでした。
どこか「ターミネーター」っぽさも感じられる犯人との対峙は個人的には好感触でしたが、人によっては安っぽく見えてしまうかもしれませんね。

猟奇事件が題材なので、かなりグロくて意外。
カットによってはスプラッターホラー並みなので、血みどろに耐性がない方が知らないで観たら卒倒してしまうんではないかと心配になるほど、メジャー系で公開される邦画としてはかなりエゲツない部類。
ただ、そういったゴア描写がメインディッシュではなく、あくまでもディティールをうめる為の表現のひとつとしてリアルなゴア描写が必要だった、という使い方がなされています。
殺害場面も割と派手で驚きましたが、なんといっても損壊した死体が並べられている場面はショッキングでしたよ。
ホラー好きとしては思わぬ収穫に心躍る場面でしたけれど。
また、予想外の犠牲がでるのもホラーっぽさを助長させます。
これは賛否両論あろうかと思いますが、あそこまで非道いことを平気な顔して出来るのをあえて見せて、犯人の容赦のない恐ろしさを際立たせる為の犠牲なのか、それともたんなるサービスなのか(苦笑)
非常に韓国映画っぽい弾けっぷりだなと思ったのですが、オリジナル版からして殺されてしまうのかな?
サイコパスには情けなんて無いだろうし、主人公を活躍させるには展開的に必要な犠牲でもありますけれどね。


主人公が常に警察の先を越せるのも、元々高い能力を持っているというエクスキュースがちゃんと用意されていますし、それでもやはり盲目というハンデを背負った女性なので直接的な危機に際しては弱さをさらけ出さざるおえず、それがスリルを生み出すシステムが巧くハマっています。
そして、人生に目的を見出せなくなっていた主人公や協力者たちが段々と事件を未然に防ごうと一丸となってゆくのは単純に高揚できる展開でした。
反対に、劇中で誰よりも人生の目的がハッキリしているのが犯人というのも皮肉が効いていて面白い。
サイコパスってのは、やはりブレーキのきかないトラックみたいなものなんですね。鈴をつけるように何か枷をつけないと止められない。
それが決め手として機能するクライマックスも、(邦画によくありがちな)過剰に無駄な演出や台詞が抑え気味で良かったです。この辺りのさじ加減が丁度良い感じ。
監督さんは、サスペンスやスリラーの分野に特に強いとはフィルモグラフィーを見る限り思えませんけれど、地力のある方ですね。
場面場面の緩急のつけ方、全体的に引き締まったトーン、若干ステレオタイプながらもしっかりと根を張ったキャラクターの確立、派手なだけで中身のない昨今の似たような邦画と比べて適度に刺激的で格段にストレスなく鑑賞できました。
同じスタッフとキャストでの続編を観たくなる、素人探偵モノとして完成度が高い良作。
ピリリと辛いけれど後味サッパリなのを観たい時にオススメです。


それにしても、ひとつだけ解せないのは、邦画って割とどんなのでも豪華仕様のソフトが発売されたりするのに、何故に本作は通常版のDVDのみなのか?
せめてブルーレイを出して欲しかった。
絶対、買ったのになぁ・・・


アマゾンプライムビデオ(有料レンタル)にて