シャチ状球体

ファブリックのシャチ状球体のレビュー・感想・評価

ファブリック(2018年製作の映画)
4.5
70年代のジャーロ映画のような演出が多用される今作。

Vaporwave調の画質が悪いテレビCM、不安を煽るオルガンを用いたBGMといった反消費主義的な要素は初期のジョージ・A・ロメロを彷彿とさせるし、ドギツイ色調の照明や"正体不明の悪意に満ちた人間"が登場するのはまるでダリオ・アルジェント作品のようだ。

性的なシーンではちゃんと(?)マネキンを使ったり直接見せないようにしていて、必要以上に露悪的になりすぎないような配慮が現代的。配慮というよりは単に作り手のセンスなのかもしれないけど……。

登場人物は揃いも揃って"ねちねちした性格の一般市民"で、この日常と非日常の境目のような絶妙なリアリティが、ドレスの毒々しい赤色が発する不安定さを強調する画作りに説得力を与えている。

メッセージ性よりも芸術性に重きを置いた作りとバッドトリップのような映像体験。この二つが組み合わさり、眠れぬ夜の悪夢と狂気を完璧に再現している唯一無二の映画。
シャチ状球体

シャチ状球体