ぽん

マー ―サイコパスの狂気の地下室―のぽんのレビュー・感想・評価

3.5
U-NEXTの紹介文「家系ホラー」につられて観てしまった。フタを開けてみたら別に家自体が呪われてるでもなく、監禁モノでほぼ家の中で話が進行するとかでもなく。ぜんぜん家系じゃないじゃん。てか家系ホラーってなにw のれん分けしてんの?

ちょっと危ない感じの大人っていたなーと懐かしさを覚える物語でした。なぜか子どもたちが赤の他人のその家を訪れ、中には上がり込む子がいたり・・・という昭和の原風景が、現代のアメリカの片田舎で繰り広げられている不思議。自分がまだ小学校にあがる前ぐらいの年齢のとき、近所の古びたアパートの一室に女性が一人で住んでいた。その人から誰かがお菓子をもらった、みたいな話を聞きつけて友達数人と行ってみたことがあった。でも半開きの玄関ドアの隙間からそっと中を覗き見たとき、スリップ姿でラーメンすすっているのが見えて、なんとなくきまりが悪くなってスゴスゴと引き返した覚えがある。しばらくして、あの人は頭がおかしいという噂が立って、誰も近寄らなくなった。あれは何だったんだろう。

高校時代にイジメにあった女性が大人になり、自分をイジメてたグループの子どもと偶然親しくなったのを機に、当時の思い出がよみがえって復讐に乗り出すという、え、今なの?って林修もビックリな回りくどい話。ずっと恨みに思ってて準備して好機を待ってたって言うなら分るんだけど。そんな、なんだか行き当たりばったりで雑に見える作品なのだけど、前述したようなノスタルジーがどうにもあなどれないのですよね。高校時代はスポーツ系キラキラ女子だったジュリエット・ルイスが、今はカジノでバニーの恰好でお酒運んでるっていうホロ苦さ。他のカースト上位の子も大した感じではなく。街に残って、たぶん親の商売を継いでるんだろう、みたいな感じで。それで自分がイジメた相手と再会しても気まずい思いをするでもなく、トーゼン謝りもしなくて。この温度差で余計にマー(オクタヴィア・スペンサー)は傷ついただろうなーってヒンヤリしたものを感じたんですよね。Oスペンサーの見開いた眼の奥にはいつも悲しみが浮かんでいた・・・。

若いときに心をひどく傷つけられたマーはすでに精神を病んでたんでしょうね。娘に対する仕打ちがそれを物語っている。が、それでも外面的にはなんとか普通の社会生活を送っていたのに、古傷を刺激する若者たちが現れてスイッチが入ってしまった。彼女は完全に壊れちゃってたけど、若者たちに対してはただ痛めつけてやるっていうんじゃなくて、愉しげな仲間たちの中心に居る自分、を実感したかったっていう切ない心情が見えて哀しかった。マージナルの悲哀は分るよ、うん。
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