ひげしゃちょー

初恋のひげしゃちょーのレビュー・感想・評価

初恋(2020年製作の映画)
5.0
崇高なテーマなんかないし、社会派な要素なんかも一切ないただのエンタメ映画。 この映画に登場するヤクザは今の時代のヤクザでなく昔の映画に出てきたようなファンタジーなヤクザ。 物語だって一言で言えば悪徳刑事と悪知恵の働くヤクザがとある計画を立てたけど、全く思うようにいかずに踏んだりに終わる。その計画に利用された女のモニカと巻き込まれたボクサーのレオが織りなす逃避行劇だ。まさに三池版『トゥルー・ロマンス』と言ってもいい。 主役の2人以外の登場人物がしっちゃかめっちゃかにバタバタ死んでいくが、登場人物みんながこの映画の中で生きている。主役を際立たせるためには存在していない。 20数年前の三池崇史のVシネマが帰ってきた感じでファンとしてはよだれもの。三池映画で久しぶりに首も転がったし文句なしの傑作に仕上がった。ただね、主役の2人よりも染谷健太とベッキーが目立ってたよ。ギャグはほとんど染谷健太がかましてるし。そして権藤がかっこいい。 1シーンかと思った滝藤賢一のしつこいぐらいの留守電には思わず笑った。 これは褒め言葉だけど、2020年になってよくこんなオリジナル映画が許されたと思うよ。 『イコライザー』みたいにホームセンターで殺し合いした後に、アニメーションでカーチェイスしてから、どこだってぐらいの美しい海と嘘だろってぐらいのパトカーの量を撮ってから、ラストにあんな引きの美しい画を撮る三池監督が素晴らしい。