なおこ

RUN! 3filmsのなおこのレビュー・感想・評価

RUN! 3films(2019年製作の映画)
4.2
3つの短編を1つにまとめた映画。制作年もバラバラな作品を繋げているのは疾走感、虚構の中のリアル、今この瞬間の生。
11月8日まで池袋シネマロサで限定公開中。キャストの皆さんによる毎晩のトークショーとお見送り。短編映画を劇場で観れることに加え、出演者へ直接に感想を伝えられるという素敵な経験をさせて頂きました。
私をフォローしてくださっている皆さんへ。是非、劇場へ足を運ぶ価値ある時間です。

「追憶ダンス」
とても好き。普通の人生に負けたコンビニ店員とコンビニ強盗の青年。ほぼ2人だけのお芝居。中学生の時にお前さーとか、小学生の時に給食の班が一緒だっただろ、とか。追憶に翻弄されていく。家に引きこもって役作りしたキャスト2人の作品への没入感が素晴らしい。画面に映るくらいの熱量。かなり砕けた若者言葉が虚構をより現実に、不謹慎ながら笑ってしまうシュールさが絶妙。

「VANISH」
長編映画への足掛けのような短編映画。死体処理を生業とするヤクザ、捨てられた少女、人間を吸わないと生きられない父と子。第9地区から役作りを、の通りに人である人外のお話。モノローグや題字の多さなど粗削りな演出が目立つが、日本のヤクザと人外の共存というコンセプトは好き。アウトローが画になる津田寛治がやっぱり好き。

「ACTOR」
売れない俳優、山田の映画。ドキュメンタリーのような演出は、とあるシーンでぞわっとする仕掛けがある。主役の黒岩さんのほぼ実体験が元であり、エチュード主体のワークショップを経て撮影された今作は、どこからどこまでがアドリブか分からない。まさに虚構の中の現実。若い主人公を支える周囲のキャスト陣の、さぁ行け!やっちまえ!と応援しているような愛をとても感じた。大人になればなるほど、好きなことを仕事にするって大変だと分かる。本物になるって難しい。そんな気持ちがちょっと救われる映画。

お芝居と映画を愛する人達の、健全な愛に浸れる作品でした。
なおこ

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