ハンスウ

新宿泥棒日記のハンスウのレビュー・感想・評価

新宿泥棒日記(1969年製作の映画)
4.0
これは20代の頃ビデオで観たっきりなんですけど、大島渚監督の初期の頃の作品が何本かVHSビデオソフトでシリーズ化されてリリースされてたんですよね。それが当時通ってたレンタルビデオ屋にズラッと並んでたんですけど、観たのはこれを含めて2、3本くらいだったかな。60年代の大島監督の作品はとっつきにくくてね。世界観が独特でわたしみたいにテキトーに生きていた若者を簡単に寄せ付けない空気があったんですよね😅

今作も未知の世界に触れるつもりで手を伸ばした作品でしたけど、画家の横尾忠則が主演していて見たことない若い姿だったから興味深いものがありました。

これを観た90年代当時、わたしも東京に住んでいて新宿にも映画を観に行ったり遊びに行ったりしてましたけど、今作は60年代の新宿をそのまま切り取ったような作品で風俗史的にも価値のある映画だと思います。建物とか街並みとか人々のファッションにも目を奪われるし、何よりも演出されていない60年代のノリや空気があふれているのがこの作品の大きな魅力じゃないかと思います。

そんな新宿の文化のメインストリートの主役の1人でもあった唐十郎さんのアングラ劇団、状況劇場の活動やパフォーマンスがこの映画の中に映像としてしっかり収められていたのが1番ビックリしました。演劇は生物って言われるくらいだから通常は何も残らないんですよね。今でこそ演劇公演はソフト化されてますけどビデオもない60年代なの大変貴重な記録です。あの黒い眼光と強烈な個性の唐十郎の世界に思いもよらず触れることができた、ありがたい映画でした。

わたしはその後、唐組という劇団になってから一回だけ観に行ったことあります。新宿ではなく府中だったけど昔ながらのテントを張った劇場でした。狭い場所に熱気ムンムンで、確かぎゅうぎゅう詰めで体育座りして観てたんだったかな。唐十郎さんはちょっと年取っておじさんになってたけど、パワフルな演技は健在でこれにも驚かされた覚えがあります。

昨日、5月4日に亡くなられたということです。ご冥福をお祈りいたします。
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