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幼い依頼人のkuuのレビュー・感想・評価

幼い依頼人(2019年製作の映画)
3.9
『幼い依頼人』映倫区分G
原題My First Client
製作年2019年。上映時間114分。
2013年に韓国で実際に起こった漆谷(チルゴク)継母児童虐待死亡事件をもとに、7歳の弟を殺したと云うか驚くべき告白した10歳の少女に心を動かされた弁護士が、真実を明らかにするため奔走する姿を描いた実録サスペスドラマ。

ロースクールを卒業し、法律事務所に就職する前に児童福祉館で臨時で働いていたジョンヨプは、継母から虐待を受けているダビンとミンジュンの姉弟に出会う。当初は深刻に受け止めていなかったジョンヨプだったが、弟ミンジュンが死亡する事件が発生し、姉のダビンがその殺人の被疑者とされたことに何かが間違っていると感じ、ダビンの弁護を引き受けることを決意する。

皆さんは『キティ・ジェヴィーズ事件』と云うんを知ってますか?
今作品は冒頭でこの事件を触れてます。
この事件もまた、製作者側から視聴者に投げ掛けた問いの一つやと思います。
勿論、児童虐待や母性愛などもありますが、この作品をご覧になられる方で
『キティ・ジェヴィーズ事件』とは何ぞやと思われてる方に、お節介ながら紹介しつつ話を進めます。
『キティ・ジェヴィーズ事件』
この事件では、深夜に自宅アパート前でキティ・ジェノヴィーズ(1935-1964年)が暴漢に襲われた際、彼女の叫び声で付近の住民38人が事件に気づき目撃していたにもかかわらず、誰一人警察に通報せず助けにも入らなかったと云うものです。
傍観者効果(英語: bystander effect)てのは、社会心理学の用語であり、集団心理の一つです。
ある事件に対して、自分以外に傍観者がいる時に率先して行動を起こさない心理。
傍観者が多いほど、その効果は高いそうっす。
これは、以下の3つの考えによって起こる。

多元的無知 - 他の者が積極的に行動しないことによって、事態は緊急性を要しないと考える。

責任分散 - 他の者と同調することで責任や非難が分散されると考える。

評価懸念 - 行動を起こした時、その結果に対して周囲からのネガティブな評価を恐れる。

いじめやモラハラ(精神的嫌がらせ)に限らず
複数の人間が相互作用する場面
=社会的状況
には頻度依存的な同調圧力(集団圧力)が掛かる。
孔子って昔のオッサンは
『君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず』なんて云っとる。
同調行動にまつわる行為規範を云っとるんですが、
同調圧力を回避した主体的判断を実践
することは相当に困難なことであり、同調圧力を無視した行動は批判を受ける可能性もある。
『君子は和して同ぜず』という境地は、集団活動が正しい方向に向かっていると自分で判断できた場合には集団に調和するが、主体性を放棄して集団の多数派に付和雷同することをしないという自由無碍の境地かな。
せや、実際には集団状況の中じゃ大勢(たいせい)に逆らう
『己個人の意見・各種根拠に基づく主張』
てのを述べるんは、ある程度の自己の不利益と複数の人から嫌われたり非難されるリスクを侵す必要性があるさかいに、思っているよりも簡単なことちゃう。
また、同調圧力や同調行動ちゅう言葉の語感には 
『自分の主体性や自律性がなく周囲の雰囲気に流される』
ちゅう悪いイメージもあるけど、同調圧力に従うことは集団の空気を読むことでもあり
『集団の秩序や暗黙のルールを重んじるだけの協調性(常識)がある』
ちゅうエエ評価に結びつくこともあるし厄介。
規律ある労働と集団との協調に支えられた産業社会への適応を目指す学校教育の中でも、
『集団行動への協調性(個人の意見や考えに固執せずに譲歩できること)』は一般的に性格上の長所(特長)として評価されるクソっくらいやけど。
みんなが賛成していることに反対して非協力的に振る舞うことは、通常の学校生活ではマイナスに評価されるし、物事をみんなと異なる角度から見て解釈するようなスタンスや徹底的に議論してお互いの意見の是非を突き詰めることに不快感や煩わしさを感じる人は少なくないんちゃうかな。
集団の同調圧力に逆らって個人の意見を殊更(ことさら)に主張すれば、『あいつさえわがままを云わんと黙っとったら万事順調に進むのに(今まで通りの慣例や常識に従っておけば余計な波風が立たへんのに)』ちゅう形の非難や反発を受けることは容易に想像出来るし、この種の同調圧力は企業官庁の内部告発や先生(保護者)へのい
じめの報告など 
『客観的には正しいことだけれど、仲間のみんなに被害や迷惑がかかるような主張 (暗黙の了解で慣習として見過 ごされてきた不正や悪事を告発する主
張)』
に最も強く働く。
実際の利害関係や暗黙の了解(伝統的規範)の共有がその集団にあるほど同調圧力は強く働くが、
利害関係のない全く知らない他人同士が集まっても同調圧力は働く。
更に云やぁ、個人の価値判断(道徳規範)や利害得失の関係しない、線分の長さや色の識別、簡単な四則演算など『知覚判断(知的判断)』
にもみんなと同じ答えを答えようという同調圧力は影響してる。
そないな事を、もし余裕があれば片隅に置いてこの作品を観てみたら違う形で感想が生まれるのではとお節介ながら長々と綴りました。
今作品鑑賞で参考にして頂ければ幸いです。
私的の感想としては、義理の母ちゃん役を演じるユソンの実在感は、現実に悪影響が出てしまわへんか心配するくらいの熱演でした。
ゴムで髪を結わえ付けてから凶行に及ぶ継母のリアルな怖かったブルブル。
マジに子供なら口答え出来ない程『鬼』になってたし、
主役のイ・ドンフィの朴訥を演じてたチェ・ミョンビンの健気さには、
やるな!!って贈りたいかな。
考えさせられる映画でした。

今日は七夕
皆さんに幸せが降り注ぎますように🎋
kuu

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