おたば

幼い依頼人のおたばのレビュー・感想・評価

幼い依頼人(2019年製作の映画)
4.3
久しぶりのレビューになります。

最近の韓国のエンタメはやはり注目すべきですね。音楽界も賑わってますが、映画界も隅には置けない存在です。

DVDレンタルで拝見した、「幼い依頼人」がまた胸に刺さる素敵な作品だったのでぜひご紹介したいと思います。

ソウルで弁護士として働くことに憧れていたが、中々就職活動も上手くいかず、うだつの上がらない生活を送っているジョンヨプ。
姉夫婦の家に居候するものの、当然のごとくうるさく言われ仕方なく児童福祉施設で働くことになります。

またある集合住宅の一室ではダジンとミンジュンという幼い姉弟が、今は亡き母親を想いながら日々遊んでいたのですが、とある日父親が新しい母親を連れて来ました。
もう顔も思い出せない位、母親という存在と縁遠かった2人は、新しい母親の登場に嬉嬉としていました。

ところがこの母親は酷い暴力癖があり、2人は虐待を受け続けることになります。
父親と実母の関係も悪かったらしく、父親も子供たちを愛してはいない様でした。

虐待をされる生活が始まり、ダジンは警察へ相談。その通報が児童福祉施設で働き出したジョンヨプのもとに入ります。

こうしてジョンヨプは2人の子供と出会い、物語はスタートします。

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日本でも同様の問題は消えませんが、福祉施設等がひとつの家庭に大して出来ることなどほぼ無いに等しいんですよね。

冒頭の弁護士事務所での集団面接でも描かれているんですがジョンヨプは正義漢とは異なった冷めた男でした。

「法的に何も出来ない」、「法的に問題ない」

この作品の中でも何度も出てくる、こんな言葉にすら胸が痛くなります。

ダジンの通報をきっかけに毎日施設に訪れるようになった姉弟に、ジョンヨプは仕方なく付き合うものの内心はイヤイヤで、2人が困っていることなんてあまり気にも留めていなかったんですよね。

しばらくそんな日々が続いたあと、ジョンヨプはソウルで弁護士になれる好機が訪れます。
しかし、それと同時に2人の小さな姉弟も大きく事態が変わっていくのでした。

ここからジョンヨプの価値観や感情が揺さぶられ、彼の中で何が大事な事なのか少しづつ葛藤が生まれて行く事になるんですが

中々にショッキングなんですがリアルな描写なのでもうぐわって掴まれちゃうんですよね。
中盤ぐらいが本当に涙しか出ない。


なんと言っても今回主役となるジョンヨプ、ダジンの演技力がすごい!
もちろんジョンヨプは大人ではありますけど、序盤のなんて言うかうだつの上がらないというか、生きる気力もやや失っている冴えない男が
自分の無力さに打ちひしがれるシーンとか

弟の素行の責任を負わされ、弟の分まで虐待を受ける姉のダジンがどんどん自分の人生から希望を失っていく様子だったり本当にすごい演技力で将来が楽しみですね。

前述した様に児童虐待、特に家庭内児童虐待は日本でも法律が届きにくい、様々な課題を抱えたセンシティブな内容です。
だからこそもしかしたらすぐ近くで起きているかもしれない身近なものとして考えていきたい社会問題を警鐘した社会派作品でもあります。


「大人に言っても守ってくれない」とダジンは言います。

子供が、本当に頼れるのは誰なのか。
こういう状況の子供が果たしてどんな心理なのか。
こういう子供を守れるのは誰なのか。

少しでも多くの人がこれを観て考えて行ければいいな、とも思います。

そしてきっと僕も序盤のジョンヨプの様な弱さを持ち合わせていると思いますが、いざと言う時に大切なことの判断を間違わずに居られれば、と思います。
おたば

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