masahitotenma

はちどりのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
3.9
キム・ボラ監督が、自身の少女時代の体験を投影させ、1990年代のソウルを舞台に思春期の孤独な少女の揺れる心の軌跡を描いた初長編監督作。
様々な感情を抱えながら 成長しこの世界に羽ばたいていこうとする主人公の少女の姿を、希望、愛、生命力の象徴とされるはちどりと重ね合わせている。
撮影はカン・グクヒョン
原題:「벌새」、(英)HOUSE OF HUMMINGBIRD (2020)

1994年、経済成長を遂げる韓国のソウルで、両親、姉、兄と集合団地に暮らす、マンガを描くことが好きな14歳のウニ(パク・ジフ)が主人公。
~その家族~
・小さな餅屋を営み、お互いに目を合わせない両親。
(呼んでもドアを開けず、振り向きもしない母、外に女を作り長男だけに名門ソウル大学への進学を期待する"家父長"の父)。
・親の目を盗んで暴力を振るう兄。
・外で遊び回る姉。

そんな殺伐とした家庭環境下、ウニは学校にも馴染めず、親友だと思っていた女友だちに裏切られたり、好意を寄せてきた男子生徒や後輩の女子も去っていったりと、行き場を失っていた…
そんな中、ウニが通っている漢文塾に、どこか寂しい雰囲気を漂わせる女性教師ヨンジ(キム・セビョク)がやってきて、孤独な二人は心を通わせるが、慕っていた先生は突然塾を辞め黙って姿を消してしまう…。

そして、その年の10月21日、いつも姉が乗るバスが通過する時間帯にソンス大橋が崩落するという事件が発生する。
ここから物語は急展開。翌日一通の手紙と小包がウニの元に届く…。

「なぜうちの家族は仲がわるいの?」
「顔を知っている人は…人。
心を知っている人は何人いるだろうか?」
「つらい時は、指を見る。そして、少しずつ動かすの。すると、神秘を感じる」
「誰かに殴られたら立ち向かうのよ。黙っていたらダメ。わかった?約束して」
「誰かと出会い、何かを分かち合う。世界は不思議で美しい。…今度会ったら、全部話してあげるね」

思春期の少女の心の揺れを繊細に丁寧に寄り添うように描いている。
主演の少女を演じたパク・ジフの自然な演技がとてもよい。
masahitotenma

masahitotenma