巨大なマンションの中で
我が家を間違うというウニの混乱から始まる。
高圧的な父親に対し敬語を使うウニとふたりの兄弟。
自分の子供に「恥ずかしい」だの「クソアマ」だの平気で言う父親。
その本人は妻と共に餅屋経営でいつもクタクタ。
この父親から感じる強い劣等感。
親からの過剰な期待で子どもたちは破裂しそう。
兄はウニに暴力をふるっているし姉の表情は暗い。
ウニも学校の先生に「不良」と呼ばれている。
ボーイフレンドは浮気をしては戻って来て、また去る。
親友も家庭に問題があり、自分を守るためにウニを突然裏切る。
ある下級生の子がウニに告白して来たが、すぐに冷めて無視される。
中学生という多感な時期の中、
不条理で不安定な人間関係とこの世界がとても“痛い”。
ウニの首から切り取ったしこりのように“痛い”。
『mid90s』の少年を思い出す。
家庭での世界が外の世界とリンクしてしまう。
ウニを気にかけてない儚げな母のように
恋人も友人も自分の元から離れていく。
パワハラな父と兄の見せた
タカが外れたような泣き方には驚いた。
1990年代の韓国とはどんな時期にあったのだろう。
バブルが崩壊し辛い時期に突入した我が家。
思春期だった自分の目に映る眩しい世界が
崩れていく“痛さ”を思い出し
とても心に残る作品となった。