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はちどりのeyeのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
3.9
はちどり HUMMINGBIRD / 原題「벌새」

物事は世界を突然目まぐるしく変えていく

14歳という思春期真っ只中
中学2年生ウニが体験する出来事には

彼女がいかに多種多様な刺激を
受けているかを観客も追体験できる

冒頭にウニが「ドア」を叩き続けるシーンがあってそれは自分の家を探すこと以外に

「ドア」自体が多様なコンテクストに成り代わる

という深い意味から映画は広がっていく

そしてウニの人生は観てる側の人間の感情を強く揺さぶる

家族
親友
後輩
恋人
漢文塾の先生
ウニ自身の病気
叔父の死

傍にいる人達と一緒に笑って泣いて優しさや怒りを知り

常に受ける苦痛と消えない悲しみを胸に抱え

葛藤や矛盾・虚無を感じながら「正しさ」を知っていく

日常の中の「普通さ」の裏側にある「非日常感」はいつもすぐ隣にある

まるで呼吸しているかのようなテンポで

そしてそれは突拍子もなく変哲もない

誇張もされず歪みも瞬間の煌めきも自然な形で描かれる

難解で不安さもある世の中で人々と交わい
気持ちを分かち合うことが描かれている

そしてここにはキム・ボラ監督の長編デビュー作品の中の哲学を垣間見せてくれる

風景の描き方が見せる「美」

日常の中で見せる「繊細で大胆な感情」

心に秘めた「強い意志」

自分自身を「信じ続ける」

その一つ一つをウニの純粋な態度や凛とした真っすぐな目で置き換えて捉えていく

映画の舞台である1994年
韓国の経済成長と国際進出に足を進めている中で

家長の父が絶対であるという男尊女卑文化を前提とした韓国文化を俯瞰的に理解できる

韓国史において

高度経済成長
金日成の死亡
ソンス大橋崩落事故

映画の中でのターニングポイントであり多くの人々の心に刻まれている

2時間20分の映画が体感としてまるで一瞬の出来事かのように

そして風が強く吹いて去っていったかのような

大きな感性に胸がざわめき
不穏な思春期映画でもあり

瑞々しさがそこに描かれている

社会の流れや苦痛

そして

自分の役割を考えていく

それが現代に繋がっていき
新しい価値観を浸透させる

社会・政治・ジェンダー・フェミニズムを混ぜ合わせて

人間同士がお互いの価値観を共有し真摯に向き合っていくことを通し世界の難しさや美しさを知っていく

「暴力に屈せずに虐げられることなく強く生きろ」

というヨンジの心からのメッセージは

女性が蔑ろにされた時代を経て
役割を演じるのみだけではないという

女性の尊厳を生み出す為の
一人一人に向けたメッセージ

そのものであることを改めて考えさせる

世界で最も小さい鳥の一つ「はちどり」

蜜≒希望を求めて

一生懸命に羽を羽ばたかせる姿と
ウニの無垢な姿を掛け合わせる

「先生 私の人生もいつか輝くでしょうか?」

このセリフに込められた思いをずっと考えてしまう
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