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はちどりのTAMUのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.3
大阪ミニシアターの代表格ナナゲイこと第七藝術劇場。大阪初日なので早めに向かったのだが、開演2時間前であと2席。
客席150くらいでひと席飛ばしだから、半分の客入りで満席の札を出すことになる。切ない。。
がんばれナナゲイ。

と言うことで最前列の鑑賞だったが、途中からそんなこと忘れて涙が溢れ。こんな映画が見たかった。

本作は韓国の1994年、一般的な家庭を舞台にした、中学生ウニの成長物語。
現代の視点で見ると一般的ではないのだが、自身を顧みても、女性に対する扱いの低さや、家庭内暴力など何の問題にもならなかったあの頃が描かれる。

ドラマ『応答せよ1994』で描かれたことが明だとすると、本作は暗に焦点を当てた感じ。

それでいて本作が素晴らしいのは、その懐かしさや、フェミニズム的な観点からの不平等を背景に、他者依存からの自立を描いている。

キム・ボラ監督、初の長編作品と言うのが信じられないほど自然な演出、そして脚本も努めており、テーマの浮かび上がり方が秀逸。
最後のウニの修学旅行(?)で1人で周りを見渡すシーンで涙がこぼれた。

ややもすると、自分もこの映画で言うところの自立できているのか考えてしまうところ。
自分のことを知っている人は多いけど、自分の心を知っている人は何人いますか?

最初に塾の先生にウニが投げかける言葉に、自分も強く惹きつけられた。
他者を利用したり、されたりする中で生きることなく、自分を大事に考えよう。自分もそう考えてナナゲイを出た頃には雨も上がり「世界は不思議で美しい」、そんな気持ちになった次第。
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