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はちどりのkaoのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
3.6
韓国の映画、食わず嫌いでずっと避けてきた。冬ソナが流行った時代からずっと。でもなぜだかこの作品はみてみようという気持ちになって。
観てよかった…号泣するようなタイプじゃないんだけど、何というか言葉にならないじわじわくるタイプの作品。
1994年という時代の韓国のこと、高層ビルならぬ巨大な団地の風景、日常生活のあれこれ、知らないことばかりだった。
お国柄というものなのか、ウニの家庭がそうだったのか、なぜあんなにウニの父親も兄も高圧的なのか?韓国男性をひとくくりにするわけじゃないけどなぜあんなに威張り腐っておるのか。ケガするくらいの力で妹を殴るとかありえないし、夫にケガさせちゃうくらいのテンションで反撃せざるを得ない母親とか、あんな環境じゃ心穏やかになんて暮らせないよなぁ、、、。冒頭のシーンや母親のことを必死に呼んでも届かないシーン、ウニは親からの優しい言葉を本当は求めているんだろうなと思った。親は日々の暮らしで大変なんだろうけど、子供が病気で入院しても寄り添えないくらい働き疲れてしまうしかないような働き方とか、学校の先生も強制的に不良選別等、脅すしか学ばせる術を知らないとか、経済優先のそんな社会を高度経済ナンチャラというなら、あの橋のようにウニの心もいつか突然崩落しても不思議はない。
ヨンジ先生が本当に秀逸。透明感のある雰囲気、静かに語る声、ふわっとした笑顔、タバコのシーンも素敵。不意打ちで泣きそうになった大好きなシーンがひとつだけあって、最悪って顔して駆け込んできたウニに、ヨンジ先生がお茶をいれるシーン。真っ白な陶器で丁寧に温かい烏龍茶を入れてあげる先生…。
なんて美しい。私も誰かにとってさりげなく温かいお茶をいれられるようなそんなふうでありたい。
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