シネマスナイパーF

燃ゆる女の肖像のシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
-
映画において「贅沢だなぁ」と思う瞬間が詰まっている

溜めるよね
たっぷりと焦らす
わかりやすい場面は、初めてエロイーズの顔が出されるまでの時間
とにかく追っていき、溜めて溜めて、見せる
この映画、とてもナイーブながら、狙ったようなハッとするようなカメラワークが多い
ふたりの顔が並んでいるのを横から映し、手前が横を向くことで奥の顔が見え、戻し、再び横を向くと奥がこちらを見ている…

顔をずーっと映して、その間で感情の変化を見せる
ホント贅沢だよねこれって
これで映画の大半を占める
しかも、音楽で盛り上げるようなことは絶対にしない
女優たちの顔だけで感情を語るんだから、これ以上贅沢なことはない

数少ない音楽の使い方が凄い
効きすぎている
ヴィヴァルディの四季「夏」を鍵盤で弾く場面は、エロイーズの笑顔が初めて見える場面
火を囲んで歌う場面は、ふたりの感情が決定的になる場面
そして再びヴィヴァルディが流れるのは…というね
振り向いて欲しかった彼女は…
もうね…言葉出ないですよ…


タイトルの出し方もかっこよかったなぁ…
高評価の期待を裏切ることは決してないです
限られた物理適空間での小さな物語だからこそ、愛がこれ以上なく美しく描かれている
暖炉前で暖まりながら、その火でパイプ煙草を吸う姿には、パラサイトの下水浸水便所煙草並みのかっこよさを感じた