えリス

燃ゆる女の肖像のえリスのネタバレレビュー・内容・結末

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

静かで綺麗な映画
古い時代(観た後に調べたら18世紀らしい)の映画っていうのは分かるけど、全然古くさくなくて、自然に登場人物の気持ちを汲めるような場面が多かった
エロイーズとマリアンヌが全く型にはまってないキャラクターやからっていうのもあるかもしれん
2人とも特に目の演技がすごいと思った
周囲への拒絶、好奇心の強さ、意志の堅さが分かるエロイーズの目
マリアンヌの目は賢さ、教養、経験豊富さが滲み出てる感じ(勝手な印象)
どっちも魅力的で、一筋縄ではいかない独特で自立した美しい女性像がそれぞれの形で表れてたと思う

基本的にBGMなし、セリフも最少限
その分、ここぞという時に挿し込まれる歌とか演奏の引力が物凄かった

女だけの謎の祭りの不穏さ(歌い始めめちゃ怖い)、ソフィの堕胎シーン(赤ちゃんの手を握りながらの堕胎とか悲しすぎる...見ててしんどかった)
ただ綺麗なだけじゃない、なんとなく「女性!」が色んな角度から見つめられてる感じ
堕胎時のソフィから目を背けるマリアンヌにエロイーズが「ちゃんと見て」って言ったり、その日の晩に堕胎した時の絵を描かせたりする場面は、観てるこっちまで「逃げるべきことじゃない、ちゃんと向き合え」って言われてる気持ちになった

重要な場面でしつこく印象付けられる炎
対照的に爽やかな晴天の青い海
空間の閉鎖と開放が気持ちよくて、普段映画観てるとあとどのくらいで終わるかなとか思っちゃうけど久しぶりに「ずっと見てたいな〜」ってなった

食堂的な部屋でソフィが配膳してる場面とか、完全に西洋画に見えるシーンもいくつかあって楽しかった というかソフィの顔がめちゃめちゃ絵

もともとエロイーズが結婚するための肖像画(今でいうお見合い写真みたいなもん?)をマリアンヌは描きに来てるので、2人は結ばれない前提で、悲しいけどなんとかそれぞれ折り合いを付けた上でギリギリまで愛し合うんやけど、
駆け落ちしよ!とかの展開にならんかったところは時代的な拘束を持たせたんかな

そういうこの話の筋に対して中盤で出てくる神話(なのか?)はたぶんすごく象徴的で、「死んだ妻を冥界から連れ戻す為には帰り道で絶対に振り返ってはいけないと言われていたのに、あと一歩のところで妻を案じて振り返ったために妻を冥界に再び落としてしまった男」の話を読んで、マリアンヌは「妻よりも妻の思い出を取った」と思い、エロイーズは「妻が振り向かせるよう声をかけたのかも」と思う
正直マリアンヌの意見は全然分からんかったけど、屋敷を後にするシーンでエロイーズの「振り返ってよ」に対して思わず振り返るとそこには花嫁衣装のエロイーズが立っている、っていう展開で「あ、もうこの2人は結ばれないんですね」というのは伝わった
一度死んだ人間を呼び戻して一緒に暮らす→きっと普通の人たちよりも色々大変なことが起きる
→妻はそれを分かっていて、葛藤したけど自ら別れることを選んだ?
っていう解釈でいくと、昔の時代に女同士で生きていく厳しさ(今も厳しそうやけど)と愛ゆえの別れを表してるんかな〜〜

エロイーズとお母さんが同じ生地のドレスやったのも意図を感じたけど、単純に可愛かったです
えリス

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