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燃ゆる女の肖像のmのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
2.0
センスがいいのか悪いのか分からない作品。《絵画のような作品だ》なんて言い切られるなら映画である必要は?

not for me。
最近はこういった、良い言葉で言うなら雰囲気がある、悪い言葉で言うなら狙い過ぎな画の作りは流行っているのかしら。
また極力BGMを省いて鳥の囀りや水の音を流すのも流行っているの?
凄く美意識の高さを感じる《完璧な映画》であることは確か。なんだけど、《完璧な映画》なだけで、監督の個性や作家性などを感じることはできなかった。没個性。

マリアンヌ(ノエミ・メルランさん)とエロイーズ(アデル・エネルさん)の交流は、結構セリフ任せ。行間がありそうでない。
オルフェウスの挿話を議論するシーンはラストの伏線回収というより、説明的に思える。

マリアンヌが見るエロイーズの亡霊もラストの説明であって、若干寒さを感じる。心理描写なのか分からない。
感想書いていないんだけど、おなじような心理描写なら『ダケレオタイプの女』が上手だった。

カメラワークもあまり好みじゃなかった。もう少し振ったり、引いたり、寄ったりしてくれたほうが彼女たちの心理描写も分かり易くなる。絵にこだわるあまり、そこらへんおざなりな気がしてならない。

映画を観るというのはストーリーだけじゃないものが欠かせないと思う。カメラワーク、音楽、構図、いわゆる演出というものがあってこそ。丁寧に描くのを目的とした時にそういう演出を極力減らす作品はあるけれど、今作は足りな過ぎる。(演出減らして素晴らしくなる作品ってよっぽど演者に演技力があるか、またはストーリーがより重厚か。今作はどちらもない)
しかもそれが監督のセンス、美意識を感じさせたいが為の自己満になっている気がする。
マリアンヌとエロイーズのしっかりとした対峙、深い交流が上っ面だけに見えてくる。

上っ面ってことで、ここからが少し語りたいのだけれど、マリアンヌとエロイーズが恋愛に発展した瞬間が暴力的だと感じた。若干の雑さを感じる。
今まで丹念(丹念な場所と雑な部分があるけど)に彼女たちの交流を描いていたのに恋愛に発展した途端、俗物的になる。
ドラッグを脇に挟み、擬似性器。糸を伸びさせたキスシーン。心の触れ合いが、肉体的な触れ合いになった途端、純粋さが消え去った。儚く刹那的な美しい恋愛にぶち込んだ、監督のセンスを見せ付けるような官能描写が浮きまくっていた。
彼女たちがどう愛し合おうと勝手だけれど、あのシーン(特に脇)が必要だったのかわからない。今まで描いてきたもの、今まで私と監督が共有していた美しさが破綻した瞬間だと思う。
見る・見られる、というテーマ性の大切さも失われた。

マリアンヌが屋敷に来て一番はじめに暖炉で服を乾かすシーンは唯一好きだったかなぁ。シンメトリーで素敵。
あとはマリアンヌが月明かりの座敷を徘徊するシーンは美しかった。
歌のシーンも神秘的。
p.28は好きだけど、ラストはあまり…。

監督の美意識、画一的なセンスが光る作品。
酷評っていうより記憶に残らないものだった。

ストーリー : ★★★☆☆
映像 : ★★★☆☆
設定 : ★★★☆☆
キャスト: ★★★☆☆
メッセージ性 : ☆☆☆☆☆
感情移入・共感 : ☆☆☆☆☆

cc/すべてを、この目に焼き付けた─。
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