ダイアー教授

燃ゆる女の肖像のダイアー教授のレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
5.0
題:オルフェとレスボス島
製作:2019年、フランス
監督:セリーヌ・シアマ
原題: Portrait of a Lady on Fire
出演:ノエミ・メルラン、アデル・エネル、ヴァレリア・ゴリノ、

評判がすごくいいが、評判通りのすげー映画だった。
鑑賞後は、熱に浮かされたような感覚で「すげー映画を観たなぁ。」しか言葉が出てこなかったが、冷静になったので4つにまとめてレビューします。

1.絵の描き方
油絵ってこういう手順で描くんだ、ってことを知った。
スッと筆を入れるとそれがドレスの皺や人間の鎖骨になることに驚いた。

2.ストーリー
期間限定の愛の物語だ。
そんな話は山ほどあるが、本作は盛り上げ方がとても丁寧である。
ネタバレになるので詳細は書かないが、ラストの“28”は何とも言えない感動があった。

3.名シーン
トレーラーでも使われていた場面がとても奥深い。
マリアン:「あなたは緊張すると唇を噛むの」
エロイーズ:「そんな、あなたは動揺すると口で息をするわ」
観察する側の画家が、実は観察されていたことが判るシーンだ。
演出がベタでちょっと笑ってしまったが、巻き戻して何度も何度も観た…

これは愛の行為でどっちが“攻撃側で守備側”を匂わせていると思う。

マリアンが攻撃側でエロイーズが守備側なのだと思う。

4.オルフェとレスボス島
マリアンは島に「オルフェウス」が書かれた本を持ち込んで、エロイーズと女中に読んで聞かせている。
劇中に登場する白いドレス姿の霊的な存在は冥府に墜ちるエウリュディケであり、
結婚(男と一緒になる)は女性が“冥府”に墜ちることを意味するのではないだろうか?

オルフェウスは殺されて、その死体はレスボス島に流れ着く。
レスボス島はサッフォーゆかりの地である。

サッフォーは島の崖から飛び降り自害したと言われているが、エロイーズのお姉さんもそうだったのだろうか?叫び声もあげずに…