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燃ゆる女の肖像のysmのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
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エロイーズの真顔の解体作業。フードを被った後ろ姿から、マリアンヌが窃視する横顔、モデル承認後のこわばった正面顔を通過し、絵画に書き込まれたあの微笑みへ。面白いのは、この現実の顔の「解体」と反比例するようにして、逆に絵画の顔の「完成」が為されていくこと。現実対象を解体=差異化することで、逆に完成された絵画はより十全な一義性へと向かうことができる。だが他ならぬそれこそが2人を引き離す。ここではエロイーズの絵画は愛の不可能性のアレゴリーのようなものになっている。


また「素描の起源において、秩序と廃墟はもはや分離されない。…作品とは、秩序であり同時にその廃墟である。自らの喪失を泣き悲しむものである」というデリダの文章を思い出すなどした。
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