ちろる

バクラウ 地図から消された村のちろるのレビュー・感想・評価

3.5
村の長老の死後、不可解な出来事と暴力の災禍に見舞われる村を舞台にした物語。

ここはブラジルにあるバクラウという村。テレサは村の長老カルメリータが亡くなったことで、久々にバクラウに戻ってくるが、その日以降、村では異変が続発する・・・
冒頭から なにやら不穏な雰囲気が充満している。
ホラー?スリラー?いやそれだとちょっと違う。
不条理な暴力の渦に巻き込まれたこの小さな村の宿命は、公開時に宣伝された「血と暴力に彩られた現代の寓話」というキャッチコピーがまさしくその言葉がピッタリとハマる作品だ。

インターネットからの村名の消失
上空から村人を監視する謎の飛行物体
給水タンクへの何者かによる銃撃
UFOのようなドローン
そして通信や電力の遮断・・・

観る側まで混乱するほどに次々と頻発する不可解な事象と、村人達の困惑を描く前半から、後半は村人達の急転直下のゲリラ的反撃の行方を苛烈なバイオレンス描写と共にパワフルに描き出し、前半の謎も一気に回収していく展開にはカタルシスを感じる。

不条理なバイオレンスの裏に、都市部と農村部の深刻な経済格差といった現代ブラジルが抱える問題を背景に忍ばせ活写していく本作。
しかし社会派作品かというとちょっと違う。
個人的には内容は全く違うのに、不思議なシーンが山盛りで、なんだかあの『ミッドサマー』の後味を思い出す。
もちろんそれだけではない、いろんなカテゴリーをごちゃまぜにしたような自由奔放さがこの作品にはあって、それが好き嫌いを分ける要因でもあるのだろう。
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