ぽん

バクラウ 地図から消された村のぽんのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

快作ですね。
地図にも載ってない小さな村バクラウ。平和そうな田舎がジワジワと不穏な空気に包まれていく様子がイイ。農場の馬が逃げ出し、村人が殺される。もともと水が堰き止められ兵糧攻めのような状態にあった村人たちに謎の外国人たちが迫りくる・・・。皆殺しにされるのか?と思いきや、ここの住民たち只者ではなかった。キャッチコピーのとおり「見事なまでに狂ってる」。

クライマックスのバイオレンスシーンにしびれた。村を守るために戻ってきた兄ちゃんがカッコイイ!ノシノシ近づいてなんの迷いもなく鉈(ナタ)振るってザクザクザクとか、リズムが最高。

村全体の埃っぽさ、大量の棺桶など西部劇のイコンは色々あって、銃で攻められ銃で応戦するというプロットもウェスタンそのもの。でも、善悪(というか攻守)の対立は人種的に反転している。
クラシカルな西部劇であれば白人が善で非白人が悪な訳だが、ここではブラジル人の村人たちに白人の暴徒が襲いかかるという図になっている。

これは奴隷制の黒歴史を匂わせていそう。最近の調査で、大西洋奴隷貿易における航海はこれまでイギリスが最多と思われてきたが、実際にはポルトガル船・ブラジル船がもっとも多くの奴隷をアフリカから輸送していたという事実が判明しているそうだ。
村を襲う謎の外国人たちの会話には白人至上主義を伺わせるセリフが出てくる。

バクラウはそんな具合に蹂躙を繰り返された土地だったのでしょう。でもその度に闘ってきた。あの歴史博物館に展示された品々は、バクラウ住民たちの反骨精神と不屈の闘志を表わしている。
で、彼らが清く正しく慎ましやかに暮らしているって風でもなく、どこかヤバイ雰囲気があるのがイイ味わい。「ミッドサマー」(2019)まで行かずとも、得体のしれない田舎の恐怖って、ある。
そんなアンタッチャブルな村の物語。ちょっとペキンパー風味もアリ。
ぽん

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