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レ・ミゼラブルのyksijokiのレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(2019年製作の映画)
4.3
想像していたよりも重苦しくて最後まで緊張感のある画作りが素晴らしかった。緊張と緩和というか、常にあと数センチ踏み込んだら全体に火が広がるような緊迫感がある。人と人との対話の中も、表情からもそういう部分が読み取れてかなり引き込まれた。重苦しいし考えさせられる中で、ラストシークエンスが我々に訴えかけるものの大きさと引用されるヴィクトルユゴーの小説の一節が心に非常に刺さるものだった。

子供たちが水遊びをしたり、サッカーをする何気ない日常の映像の中に潜む劣等感や苦しみ、出自や宗教による対立やある種の洗脳に近いものなどが本当に些細な出来事に端を発して一気に膨張する。その様子が一手に広がる火種のようで本当に見ていて苦しさがあった。

大人同士の派閥や対立構造の中での対話の緊張感もさることながら、ラストシークエンスのあの映像の緊迫感と重苦しさは本当に糸がいつ切れてもおかしくないような状態でかなり心臓に悪い。何かが起きそうという状態の緊迫感ほどバクバクするものもない。

序盤からドキュメンタリーのようなカメラワークで街並みを新入り警官を案内するという形式で紹介することで、観客に対してこの土地が置かれている現況や人種、対立や現実というものを伝えてきている。ここで同じ目線に立たされることで非常に最後までポマードと同じ目線で物事を捉えられて素晴らしかった。

カメラワークも絶妙に良くて、ドローンを使った映像もだし夕陽と街並みを捉えたショットもラストのイッサの表情を捉えたカットも本当に素晴らしくて最高だった。

緊張と緩和をカメラワークで表現しているし、それぞれの表情が心境を語るというかある種の絶望感や不満を出していてそこが行動という形で溢れ出す様を導火線に火が付いてから爆発するまで見せ続けてきていてそれが本当にボディブローをずっと受けてるような感覚で苦しかった。

「すべき事をしろ」かぁ…。
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