映画好きの柴犬

レ・ミゼラブルの映画好きの柴犬のレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(2019年製作の映画)
4.0
大人を見て、子供は育つ

 「レ・ミゼラブル」の舞台となったパリ郊外。移民の少年がサーカスのライオンの子供を盗んだことから始まる、地域の実力者や警察を巻き込んだ抗争を描く社会派クライムサスペンス。

 「パラサイト」とパルムドールを争った傑作。エンターテイメント性では敵わないが、リアリティと衝撃度では負けてない。

 移民が多く住む荒れた団地街は「ディーパンの闘い」を思い起こさせる。不祥事を隠蔽したい悪徳警官と、優位に立ちたい地域の実力者、麻薬の元締めらが駆け引きをする様をドキュメンタリータッチに描き出す。よくできているが、ここまではまあ普通。しかし、まだ正義感の残る新任警官の活躍でなんとか丸く収まったかのように思えたところからの、クライマックスが衝撃的。底辺の生活の中で、私利私欲で自分のことしか考えない大人へのクーデター。余韻を残しつつ、判断を投げかけるラストシーンも秀逸。