予告編を観た時から気になってまして、カンヌ国際映画祭で『パラサイト 半地下の家族』とパルムドールを競ったという本作を鑑賞してきました。
監督は主にドキュメンタリーを手掛けてきてこれが長編デビューとなるラジ・リ。監督は今もこのパリ郊外モンフェルメイユに住んでおり、劇中の新しい警官の赴任、ドローン、盗まれたライオンも実際の話だそうです。
まずオープニングの群衆のシーンに引き込まれます。ワールドカップでフランスが1つになったという描写ですが、明らかに皮肉めいてます。(笑)
基本的には新入り警官のステファンが主人公ですが群像劇に近いです。ストーリーも起伏がある訳ではなくドキュメンタリーのように進んでいきます。
地元警察、不良少年たち(言い方が古い)、市長と名のる自警団、イスラム原理主義者、ロマ民族のサーカス団、これらの人たちが些細な出来事をきっかけにそれぞれの思惑によって問題をこじらせていく様は最初は滑稽ですが、次第に恐ろしい事態へと発展し、改めて異なる人々の融和の難しさを突き付けられます。
またドローンが事件に重要な役割を果たしていますが、あたかも神の視点のように相も変わらず争いを続ける人間を俯瞰しているようにも見えました。
フランスの大統領も鑑賞し、この地域の生活条件の改善すると述べたそうです。映画が行政をも動かすなんてすごいことですよね。
大人が不正をはたらき社会を腐敗させれば、そこで育つ子供もまっとうに生きることが難しくなる。とても対岸の"悲劇"とは言えません。