ケン・ローチ監督の過去作
「わたしはダニエル・ブレイク」は高齢者の物語がメインで
あと1つ物足りなく感じていたが
今作は私と同じく子育て世代ど真ん中設定に他人事では居られない
国の法や制度により搾取される側(負け組)の一般市民の物語で
搾取する側(勝ち組)が決めたシステムとルールに1度はまると
まるで蟻地獄のように抜け出せない負の連鎖となり
そこに家族・育児・介護等の問題がこれでもかと描かれる
また登場人物が極端に少なく
概ね家族と少しの同僚と顧客だけで劇中世界の濃密さが際立つ
知力の乏しい体力勝負の私的には
同類の父親目線で観賞していたが
母親パートが最も辛く
聖母の様な母性で子供へ注ぐ愛情と
介護の仕事時間以外にも頼られると夜間でも対応する奉仕の精神は天性の性格とも感じたが
その彼女が
髪をとかされながら落涙したり
病院待合室で不満を吐露するシーンにはそんな彼女をここまで追い詰めるのかと完全にヤラれた…
そして悪役とも感じられた集配所の責任者も経営者側ではなく
他部署との競争を強いられる中間管理職的立ち位置で
恐らくドライバー同様に休みもなく長時間労働の激務であろうと予想されたが
その屈強な肉体から受ける印象は
境遇や知力・体力的な弱者を選別し
弱い者が更に弱い者を叩き
更に悪環境におとしめられる構図を見せつけられた