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バワリイのニューランドのレビュー・感想・評価

バワリイ(1933年製作の映画)
4.1
✔️『バワリイ』(4.1) 及び『男の魂』(3.2)▶️▶️

 フォード的なアイリッシュものも、ウォルシュにも、そういった血があるのか、似てある。のか、そういった当時の一般ジャンルなのか。時代の近代化に反し、内では男が男として張り合い、自己証明してく、民族的固有世界観。が、古来規律や血に縛られるところは、フォードに比べ大幅に少なく、自己世界が拡がるままに、それ自体の限界を計るように、突っ走ってゆく。
 『バワリイ』。1980年代のこの作家の特集で、高名なのは、と観てるが、快作としか分からなかった。改めてスーパーが入ってるので観ると、やはりとんでもない大傑作と納得する。この暖かみ、気っ風、出鱈目、ざっくばらん、誰構わぬ暴力、しかしトップ狙いに確実も狡猾な手段には手を伸ばさない、場末の小規模ベース、(勧善懲悪ヤスヤス超えての)最良の大衆演劇と云うべきで、緻密な展開等とは無縁、しかしより大きなひとの世の流れ、現実の持つ揺るがせない磐石な何かの存在、が控えている。そもそも奇声の人々(や船汽笛)のアップの重ねなどはあるも、角度変・寄り入れ等は90゜変を除いては大して根拠がなく、カット間の細かい動きや表情もそれ程マッチしていない。その代わり、気に食わない態度の奴は女だろうと、(効果的だが致命的ではない)凶器が手元にあれば躊躇なく手にして、倒れ伏すも気にせず頭部を殴り付ける。一方、彼らの登場や立ち振舞い、彼ら越しのステージの踊り子らは、低い位置から仰角めに内からのディグニティを受け止めるように捉え、そういった群衆や一対一のファイトは、敢えて冷静と神の目でも通すように、(真)俯瞰めの退きめに捉え、早回しもそれ程際立たず、ワイプで場面をクールに受け渡ししてく。勿論、もうもう混雑場面の酒場などでは、自由にフレームを縦にも出入りし、それが複数衝突しながら、フォローのパンや移動も力あるが全体から取り出し一部でしかないを承知の動きだ。大混乱2群闘いや、丸っこくゴタゴタセットと人混みのコラボの密感も、どこか微かな方向感覚がある。映画化に限るなら、オリヴィエ・コージンチェフ・ブラナーのシェークスピア劇を上回る。この安っぽさ、心意気、論理を超えた何か。葉巻に爆竹仕掛け繰返し気付けも、適度のタイミングかあり、それ程しつこくは感じない。
 19世紀末の荒くれ豪気が渦巻く、NYのバワリー地区の男の世界、子供と女が入ってきての膨らみ持たせ。ブルックリンのビール工場とタイアップして大きな酒場を、「信用出来ない女はステージ以外は店の中まで入れず」男の世界の拠点としてる、地区No.1のボス的存在と、同等に消防団を率いて張合い、その地位を狙うというより、殆ど自分と同化した理想で成り代わるものとして、決着を近づけてくる、漁師や床屋で生計成り立たせてる、No.2の大物。二人は様々な賭けをして闘って張り合うが、仲間が姑息な勝つ手段を提供するは、そいつの方を張り飛ばす。その二人の間にいて行き来し、彼らの価値観を和らげるのが、「養うが面子あるから大人しく」が聞けぬ、本当にワルいことを実行してくガキと、酒場の女のように「こっちの芯を奪い取る性向」ではなく、作家を目指すも勤めてた書店が潰れ泊めてやったの若い女。その綺麗な心情に、ガキと似てズルズルとなる。ガキは対女も関す約束違うを責めて、ボスの元を離れもう一方へ。彼も「好き」だが、心の内ではボスは変わらぬ「友だち」。No.2はボスを訪ねて、不在で偶然会った彼女に新しい出会いを感じてく。
 2人は違反禁止の、マンハッタンの巨大橋飛び込み、広い停泊甲板タイマン勝負決闘に、迄つき行く。一般的に無理と判断とはいえ、あっさり、店奪取や・それに繋がる飛び込みは人形で無効(との意図的たれ込み)への晴らし、等を賭ける。瀕死傷害で警察(「滑っただけ、(負けてはいないし、)怪我の相手ではない」と重傷本人否定)や、後の禁酒法に至る、うるさ型上流婦人道徳団体が絡んで来て、後者は取られた店への破壊誘導あったとはいえ、店の破壊つくしが凄い。が、二人は疑似親子復活や新婚生活の方が当然に拠り所、の内面こそが真の価値を確認、「和解」から、共にキューバへ対西戦争へ出征へ、舵を普通とする。
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 似たNYアイリッシュものでも、基本、安っぽく、せせこましい場末感の『バワリー』に比べ、スケール大きく、映画的なキレや動感があり、人情も気概も分かりやすく含み、遥かに今でも市場に出すと気を惹くに違いない、快作ではある『男の魂』。これも’80年代の特集でやっていたか(が、当時は群馬に近い工場勤めだったので、めぼしい物、休日の上京可能日の物、しか観れなかった)。
 ニューヨークの海底トンネルの開通難工事に従事する、特異な仕事だが誇りや手応えを感じてもいて、互い周囲や世間に対抗しながら、の男たちを描く。合成やミニチュアの特撮もユニークで面白く効果的、大採掘機械の洞内嵌め込み大セットと工事過程の科学的?カット組み、水圧に負けないためのそこに高い気圧の気体充満設定、段階経て気圧を戻しても一般地上世界に戻っても残りやすい身体弊害の説明の確かさ、それでも水が間違い開けた穴からの流入、その大規模水害や中での機器らの炎上スペクタクル、それらに関する大規模移動感が普段の人らレベル移動に加わる、一般に平明で確かに呼応のカッティングとフレーム内動き。中身的にも人間限界きてる坑夫を叱咤リードして人間離れの主人公、ニューヨーク側から掘る別隊とブルックリン側から掘るこちらとの中間点超え争いの苛烈、こちら側の中でも全体を明確リードするトップ争いが厳しくも行われる。目をつけたのと、それを暖かく見守る二重の酒場の女たちも広く包んでくれてる。それらへの勝負も、一段上の相互認識ぐある。
 納得できる進行を一応取ってるが、無茶振りががむしゃらに貫いてく魅力には至っていない。まぁ、求められる、映画的には充たされてるが、一般に映画的な映画というのは、それ程惹き付けてこない、のも確か。



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